工場のレイアウト計画における「アクティビティ相互関係分析」と素案作成:現場改善を定量化する分析手法とは(3)(3/3 ページ)
工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第3回は、SLP法における「アクティビティ相互関係分析」と「レイアウトの素案作成」について説明する。
2.レイアウトの素案作成
次にレイアウトの素案を作成しますが、物理的制約や法規などの制約条件、管理上の配慮などを勘案しながらレイアウトの素案を決定していきます。併せて、レイアウト形態の決定、配置構想の立案、レイアウト案の可視化などを行った上で、レイアウトの素案を幾つか作成します。
2.1 面積相互関連図(Space Relationship Diagram)
これまでの分析手法では考慮していなかった、生産活動に必要な面積の決定を行って、利用可能な面積と対比しながらレイアウト案の調整を行います。面積相互関連図は、決定された面積をアクティビティ相互関係ダイヤグラムに当てはめながら第1段階のレイアウト案、つまり面積相互関連図を作成します。
図4に事例として示した面積相互関連図は、理論的に理想となる配置ですが、実際のレイアウト案の採用に当たっては、さらにマテリアルハンドリングシステム(MH:Material Handling System)や倉庫などの保管設備、工場立地、人的要件、建屋構造、動力や水道、ガスなどのユーティリティー付帯設備、諸管理方式など、種々考慮すべき修正事項を加味して総合的に実際の制約を考慮して作成します。全てのアクティビティが最適に配置されるように調整を繰り返しながら、レイアウトの素案を決定していきます。
また前述しましたが、実際のレイアウト素案の作成に際しては、アクティビティの数が多ければ多いほど複雑さが増してきます。結局は、4本線や3本線で結ばれたアクティビティ同士は、できるだけ接近するように、また、それらの線の交差ができるだけ少なくなるようにレイアウトを決めていきます。
2.2 レイアウト案の作成
作成した面積相互関連図は、理想的配置であるといえますが、それを実現するためには多くの修正すべきことが含まれています。いろいろな制約条件を加味しながら面積相互関連図を実際的なレイアウト案に仕上げていかなければなりません。
そのようなレイアウト案を作成するためには、実際上の制限について検討を行わなければなりませんが、制約の中には極力排除すべきという努力目標的な制約や、必ず満たさなければレイアウト案が実現できない制約条件などが存在します。
レイアウトの種類によって、それぞれ条件が異なります。例えば、倉庫のレイアウトでは、物の運搬方法や保管設備の状況、物の取り扱い方法に合わせて配置を変更しなければならないこともあります。また、事務所のレイアウトでは、管理方法や人的側面が優先され、運搬方法や設備などについては優先度が低くなります。
◇ ◇ ◇ ◇
今回は便宜上、サービス部門と表現していますが、一般的には「補助サービス」と表現されることもあります。補助サービスは、動力や補助的設備など、レイアウトすべきエリアに用意しておかなければならない関係のある活動や機能のことで、それによって広義の生産性などに対して効果的であるものをいいます。
例えば、保全や機械設備の修理部門、工具室、洗面所や更衣室、食堂、場合によっては救護室、工場事務所、出荷場、受け入れ場(または入荷場)や出荷(または発送)を含めた補助サービス、倉庫も補助サービスに含める場合もあります。今回は、受け入れ場、倉庫、出荷場、事務所はサービス部門とは分離しました。
これらの補助サービスは、関わる全ての面積を合算して比較してみると、生産部門よりも広い床面積を占めることは珍しくありません。従って、補助サービスのレイアウトに対しては、注意深くレイアウト計画を立案しなければなりません。
面積相互関連図を基に複数のレイアウト案を作成し、その後、それぞれのレイアウト案について比較して評価を行います。次回は、このレイアウト案の比較評価について説明していきたいと思います。
筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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