オリンパスが内視鏡AIプラットフォームを構築、2024年4月から欧州で先行展開へ:人工知能ニュース
オリンパスは、医療従事者が内視鏡を用いる際に病変の早期発見やより精密な治療などを可能にする内視鏡AIのプラットフォームを構築していることを明らかにした。
オリンパスは2023年7月24日、東京都内で会見を開き、医療従事者が内視鏡を用いる際に病変の早期発見やより精密な治療などを可能にする内視鏡AI(人工知能)のプラットフォームを構築していることを明らかにした。現在、欧州の病院で実証実験を進めており、2024年4月には欧州市場を皮切りにプラットフォームの立ち上げを始めたい考えだ。
オリンパスの内視鏡はこれまでに、同社製を含めて内視鏡AIやCAD(Computer Aided Detection/Diagnosis)と呼ばれるソフトウェアが利用可能になっている。ただし、内視鏡システムに組み込んだ状態での販売だったり、サードパーティーベンダーのソフトウェアを後から内視鏡システムに組み込んだりといった形での運用になっており、さまざまな内視鏡AIやCADを活用したい医療従事者にとっては利便性が課題になっていた。オリンパス カスタマーソリューションズ/オリンパスデジタルヘルス バイスプレジデントのショーン・ラロッコ氏は「これは医療従事者の問題にとどまることではなく、患者が治療を受けていくパスウェイ(進路)を向上していく上でも改善すべきことだ」と語る。
開発中の内視鏡AIプラットフォームは、エッジデバイスとなるオリンパスの内視鏡システムと、ラロッコ氏が「OS」と呼ぶクラウド上に構築したソフトウェア基盤を接続することによって、医療従事者が必要とする内視鏡AIのソフトウェアを自由にダウンロードして利用できるようにする仕組みになっている。既存の内視鏡システムとも連携が可能なように、エッジデバイスとプラットフォームをつなぐためのデバイスも用意する方針である。
内視鏡AIソフトウェアは、ワークフロー管理、CADやリアルタイムな手技の支援、AIによる臨床/業務インサイトなどさまざまな分野で提供し、オリンパス内製だけでなくサードパーティーソフトウェアもラインアップできるように専用のSDK(ソフトウェア開発キット)を提供していく考えだ。「スマートフォンのアプリストアのように、さまざまな内視鏡AIソフトウェアを利用できるようにしたい」(ラロッコ氏)。
オリンパスは消化器向けで世界シェア70%に達するなど、同社の医療用内視鏡システムは国内外の医療機関で広く利用されている。この強みを生かして、内視鏡AIプラットフォームの事業展開でも主導権を握るべく開発を加速させている。さらに、2023年6月には年間5000万件の利用がある大腸内視鏡検査のAIソフトウェアを展開するオディン・ビジョン(Odin Vision)の買収を完了している。オディン・ビジョンの内視鏡AIソフトウェアが広く利用されている欧州市場を中心に、内視鏡AIプラットフォームの事業展開を先行させていく方針である。
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