フローティングリニア技術が開く新たな可能性、パッケージ産業の変化の兆し:interpack2023 最新動向レポート(後編)(2/2 ページ)
3年に1回開かれる世界的な加工包装展示会「interpack2023」最新動向レポートの後編です。
アダプティブマシンがもたらすものとは
もともと地理的に持っている多様性と昨今の消費者行動の変化。それが「アダプティブマシン」の概念がヨーロッパから生まれた理由でもあります。
さらに、ヨーロッパも日本と同じく工場における人手不足、若者や労働者から敬遠されがちな製造現場といった問題を抱えています。
しかし、テクノロジーはこれからも進化し続けます。彼らは組織として失敗を恐れず、その新しいテクノロジーの力を誰よりも先に活用することで、新たな解を見つけているように映りました。常に時代も人も変わります。先人から核となる技術を継承こそすれ、それを妄信せず、時代に適応した新たな解を考え、チャレンジすることを奨励する。その結果、彼らは業界を進化させ、高付加価値なマシンの可能性を切り開きました。
新たなニーズに対応できるこれらアダプティブマシンは、新しいマシン市場(カテゴリー)を創出し、既に生産者とマシンメーカーの双方に収益性の向上をもたらしています。
ただし、その新市場に最初に進出する企業が価格を設定するので、後から参入した企業は設定された価格に従うか、価格を引き下げて市場シェアを獲得するかを迫られます。
だからこそ、事業として三方良し、かつ高収益性を実現するには、顧客ニーズや痛みに基づき新しい市場へ最初に参入し、創出することが鍵となります。特に変化の激しい時代は、研究開発への投資を後回しにしてはならないのです。むしろ、変化の渦中にある今こそ、長期を見据え研究開発や新しいことへの投資を活発化し、その成果を得るべきです。
業界を革新し、新たな地平を切り開く機会をつかむことで、劇的で加速度的な成長を生み出し、その挑戦を奨励する企業としての姿勢が次代を担う若者たちをも引き寄せるのです。
最後に、今回interpack2023において、B&Rのブースに協力、出展をいただいた花王のイノベーションをご覧ください。
私も説明員の1人としてこの革新的なマシンの紹介をしていると、ブースに訪問いただいた国内外の方々から多くの感想を得ました。
個人的な主観も入りますが、海外の方々からの主たる反響は「美しい、素晴らしい、どうやって作っているのか」「少し高いファンデーションであってもぜひ購入したい」といったポジティブ、かつそのイノベーティブなアプローチそのものを評価する反応が多かった印象です。反対に、日本の方々は「花王は、自ら装置をつくるのか」「新しいビジネスを始めるのか」といった今に集中した、少々短期的かつ実利的なものが多数派の印象でした。
4半期ごとに結果を求められる昨今のビジネス環境。しかし、だからこそ、両利き経営の一方として、長期を見据え、次代を担う若者たちへ新しいテクノロジーを使って考える機会や日々のコンフォートゾーンから脱する機会を与え、未来の指数関数的な成長を見据えるべきではないでしょうか。それが先輩社員のできることではないでしょうか。
今回の欧州滞在中、円安の恐ろしさをまざまざと思い知りました。もう1000円でお昼ご飯も買えませんし、500mlの炭酸飲料水は300円でした。円安は単純に国力の低下を表す指標ではないとしても、過去30年間にわたって実質GDP成長率が低迷し、平均賃金が延びないこの現状を作ったのもわれわれです。
次のイノベーションを一緒に創り、高付加価値のソリューションも販売し、フェアトレードをしましょう。前例や先人の功績を尊敬すれ、妄信せず、前例にとらわれずに時代に適応したソリューションを考え、ヨーロッパ諸国や北米諸国、他国に先んじて新しい市場やカテゴリーを創出しましょう。
新しいビジネスモデルやマーケットの創造は決して簡単なことではありません。だからこそ、その挑戦は老若男女問わず人々を引き寄せ、感動を与え、会社を潤わせ、また新たなチャレンジを生み出すのだと思います。この業界の未来を共に切り開いていきましょう。
筆者紹介
小松和幸(こまつ かずゆき)
B&R株式会社セールスマネジャー
日系産業用制御メーカーにて、主に自動車産業向けアプリケーションのシステム営業を担当。2014年にオーストリアのオートメーションソリューションメーカーであるB&R日本法人に入社。スタートアップメンバーとして参画し、OEMセールスマネジャーを経て現職。入社以来、日本の機械および装置メーカーが世界市場で勝ち続けるために価値あるソリューションやテクノロジーは何かを考え、精神一到の気持ちで臨んでいる。
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