躍進するアダプティブマシン、世界最大級加工包装展示会で見た潮流と進化:interpack2023 最新動向レポート(前編)(1/2 ページ)
3年に1回開かれる世界的な加工包装展示会「interpack2023」で感じた最新動向を2回に分けてレポートします。
2023年5月4〜10日にドイツのデュッセルドルフで「interpack2023」が開催されました。3年に1回開かれるinterpackは、パッケージング業界や関連するプロセス産業にとって、世界最大かつ最も重要な見本市の1つとなっています。パッケージングマシン、製菓マシン、医療品パッケージ、材料、パッケージング関連サービスなど、幅広い製品群と最新トレンド、テクノロジー、イノベーションを確認することが可能です。
世界中から出展社や来場者が集まるため、市内のホテルは予約が困難となり、期間中は価格も高騰するほど影響力のあるイベントです。主催社発表によると、interpack2023は2807社が出展し、合計155カ国から14万3000人が来場。「FOOMA JAPAN 2023」の出展社数が969社なので約3倍の規模になります。
コロナ禍で2020年は中止となったので、今回、ついにリアル展示会が再開となりました。私の所属するB&R Industrial Automationも出展し、幸運なことに私も日本から参加する機会に恵まれましたので、現場で感じた最新動向を前編と後編に分けてレポートしたいと思います。この情報が皆さまの役に立ち、一緒にこの業界をさらに発展させるきっかけとなれば何よりです。
高まるアダプティブマシンの存在感、20社以上が関連技術を展示
今回のinterpack2023における大きなトレンドとなっていたのが、消費者ニーズに適応する「アダプティブマシン」の存在感が以前と比べ際立って大きくなっていたということでしょう。
アダプティブマシンとはB&Rが生み出した概念で、多様化する市場ニーズやデジタル世代の消費に適応し、急速な需要変動やパーソナライズ製品、小バッチサイズの生産にも柔軟に適応するマシンを意味します。
前回のinterpack2017でも、アダプティブマシンを実現するためのリニア搬送テクノロジーを搭載したコンセプトマシンを確認できました。しかし、intepack2023では、なんと20社以上のマシンメーカーがリニア搬送テクノロジーを自社システムに組み込み、それをコンセプト出展ではなく、販売用マシンとして展示していました。
過去3年間、私たちの消費行動の変化は劇的でした。確かに、新型コロナウイルス感染症が引き起こした行動の制約も大いに影響しましたが、誰もがポケットに高性能なPC、すなわちスマートフォンを持つ現代において、常時安定したネット接続とWebテクノロジーの進歩により、個々の消費者がより自分らしさを求めるスモールマス市場が登場しました。さらに、ヘアケア、スキンケア、サプリメントなどにおいては、特定の根強いニーズに応えるニッチ市場や、少々ぜいたくを楽しむプレミアム市場も急速に出現しています。
これに対応して、製品生産の現場では、急速に増え続ける製品の種類(SKU)、SNSのインフルエンサーよる予測不能な需要変動、そしてマスカスタマイゼーションへの対応といった多くのチャレンジに直面しています。これらの課題に適用できるマシンとして、アダプティブマシンの存在感が一層強調されています。
アダプティブマシンは、私たちの変化し続ける消費行動のニーズに対応するためにデザインされています。そのキーテクノロジーは4つあります。リニア搬送テクノロジー、ビジョンシステム、ロボティクス、デジタルツインです。これらを統合し、ソリューションを提供します。
特に、リニア搬送テクノロジーはアダプティブマシンのバックボーン、コアテクノロジーであり、この技術をいかに創造的に活用し、ROI(投資利益率)を見極めシステムに組み込むかが重要です。
リニア搬送テクノロジーは、2010年代から注目を集め始めました。個別に制御可能なシャトルによって製品送りのピッチを自在に調整することができ、異なる形状の製品の投入をオンザフライ(ラインを止めない連続動作)で柔軟に変更することが可能。さらに、ホットスワップ対応により、人手を介さないシャトルの交換、ピットレーンを用いて製品ホルダーの交換をダウンタイム無しで実施することもできます。
しかしながら、その初期にはシャトルの急加減速による発熱、洗浄による水没、従来と異なるプログラミング方法、旧来システムと比較した際の初期導入コストの増大など、幾つかの課題も存在しました。
それが、interpack2023でリニア搬送テクノロジーをバックボーンとしたアダプティブマシンの使用が大幅に増えたことは、画期的なことであると同時に、このテクノロジーが成熟し、品質と価格が安定し、以前よりマーケットに受け入れられている証しでもあります。
これは、業界の急速な変化に適応できることからも明らかで、マシンメーカーや製品生産者も注目しており、まさにパッケージング業界におけるアダプティブマシンの役割を一層強く印象付けました。
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