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振動シミュレーションを理解する 〜CAEソフトによるモーダル解析〜CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(11)(1/3 ページ)

“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第11回では「振動シミュレーション」について取り上げる。

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 今回から「振動シミュレーション」について解説します。一般的に「振動解析」と呼ばれますが、測定値から振動モードを抽出する「実験モーダル解析」に「解析」という言葉が使われているため、ここでは「振動解析」ではなく「振動シミュレーション」と呼ぶことにします。

⇒「連載バックナンバー」はこちら

測定技術とそれに対応するシミュレーション

 連載第1回で述べた測定技術とそれに対応するシミュレーションを表1に示します。

測定 シミュレーション
1. 振動測定 時刻歴応答解析
2. 振動の周波数分析 モーダル解析
周波数応答解析
3. 実験モーダル解析 モーダル解析
4. 伝達関数測定 周波数応答解析
表1 測定技術とそれに対応するシミュレーション

 振動測定で得られるものは、振動加速度の波形や変位の波形です。シミュレーションでそれらを予測するには「時刻歴応答解析」を用います。今まで、振動の測定データを周波数分析することが常とう手段と述べてきましたが、周波数分析の結果を予測できるのは「周波数応答解析」となります。周波数だけを知りたいのなら、「モーダル解析」の結果からたくさんの固有振動数、つまり共振周波数が分かります。モーダル解析には、測定データを使った実験モーダル解析と、シミュレーションによって求めるモーダル解析があります。

CAEソフトによるモーダル解析

 モーダル解析には、実験モーダル解析とCAEソフトによるシミュレーションモーダル解析があります。恐らく、3D CADに付属しているCAE機能を利用される方が多いと思いますので、モーダル解析から説明することにします。

 表1の時刻歴応答解析と周波数応答解析は少々高額なCAEソフトが必要となります。CAEソフトによるモーダル解析の例を動画1〜3に、モーダル解析結果によって得られる情報を表2に示します。

動画1 モーダル解析結果の例(1次モード:7.5[Hz])
動画2 モーダル解析結果の例(3次モード:13.0[Hz])
動画3 モーダル解析結果の例(7次モード:69.4[Hz])
CAEソフトによるモーダル解析によって得られる情報
表2 CAEソフトによるモーダル解析によって得られる情報[クリックで拡大]

 まず、表2の解説Aについてですが、モーダル解析によって、機械の設計案が将来共振状態となる可能性のある周波数が全て分かります。周波数の数は自由度の数と同じなので、節点数×3個から拘束自由度の数を引いた値でしょうか。とてもたくさんあるので、通常の振動問題では最も周波数の低いもの(「1次モード」といいます)から数えて20個くらいを計算します。この数はソフトの中でユーザーが指定します。

 振動測定データがあれば、それを周波数分析して、ピーク周波数の最も高い周波数を求め、それをfmaxとすれば、少なくとも固有振動数がfmaxより高くなるまでの振動モードを計算すべきでしょう。筆者は、超音波溶接機などのようにわざと共振状態にして稼働させる機械を設計した際に、100次以上のモードまで計算した経験があります。表2のAで分かることは「設計案が動力源の加振力と共振するかどうか」です。共振しそうなら設計変更するのですが、そうでなければ何もしないので連載第1回では「消極的な使い方」と説明しました。

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