知っておきたい振動測定の手段あれこれ:CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(10)(4/5 ページ)
“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第10回では「振動測定の手段」をテーマに幾つかの方法を紹介する。
レーザー変位計
図9に「レーザー変位計」の測定原理を示します。レーザー光の受光素子上での結像位置から測定対象の変位を測定します。「鏡面反射タイプ」と「拡散反射タイプ」があり、著者が使っていたころは鏡面反射タイプの方が分解能が高かったのですが、今は高性能な拡散反射タイプが市販されています。入射角と反射角が大きいほど光の反射率が大きいので、何らかの理由で反射光が弱い場合には、角度θの大きな鏡面反射タイプに変えることで感度問題を解消できるかもしれません。
レーザー光を用いた測定器の注意点を2点述べます。図10のように、測定対象が水平方向に移動する場合、測定対象の表面の凹凸が原因で測定値が変化します。振動問題では数ミクロンの振動変位を測定することが多く、ほとんどの場合、測定対象の凹凸もミクロンオーダーなので、凹凸を測っているのか、振動変位を測っているのかが分からなくなります。レーザー光のスポット径は肉眼で確認できるほどの大きさなので、測定しているのはスポット径内の領域の平均値となります。測定対象の水平方向変位がスポット径よりも大きい場合や、凹凸の周期がスポット径よりも大きいときはこの問題が顕在化します。
図11は、測定対象がガラス板のような透明な場合を示します。受光素子には表面からの反射光と裏面からの反射光が結像され、両者の平均値のようなものが出力されたことがありました。
筆者の場合、図12に示すように測定範囲の端のところを使うようにして、裏面からの反射光が受光素子に届かないようにして対処します。測定原理を把握しておくと、このような対処法に気付きますので、測定器を選ぶ際は測定原理を確認しておくとよいでしょう。
ちなみに、図11の裏面反射の対処法について、「ChatGPT」に「レーザー変位計で透明体の裏面からの反射も受光してしまい測定精度が低下しました。対処法を教えて?」と聞いてみました。その結果、幾つかの対処法が提示され、そのうち「偏光フィルターを使えばよい」というものがありました(さて、使えるかな?)。
前述した三角測量方式の他、対物レンズを高速に移動してピントが合った瞬間の時間から測定対象までの距離を測定するタイプもあります。レーザー変位計は進歩が目覚ましく、今となっては少々高額となりますが、機械振動問題の範囲では、どのような分解能、どのような周波数域でも測定できるものが用意されています。
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