知っておきたい振動測定の手段あれこれ:CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(10)(3/5 ページ)
“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第10回では「振動測定の手段」をテーマに幾つかの方法を紹介する。
ひずみゲージ式加速度センサー
「ひずみゲージ式加速度センサー」の市販品はサイコロのような形をしています。測定原理は図6の通りです。重りに作用した慣性力によって板ばねが変形し、その変形量をひずみゲージで測定します。
重りに作用する加速度には重力加速度も含まれるので、DC成分から測定できますが、測定可能な加速度の上限は20[G]、250[Hz]程度です。重力加速度を測れるので静止した位置にセンサーを置いておくと、1[G]に相当する電圧出力が得られて簡単にキャリブレーションができます。つまり、1[G](9.8[m/s2])が何ボルトかがすぐに分かります。センサーと一緒に動ひずみ計を用意する必要がありますが、動ひずみ計はひずみゲージによるひずみ測定にも使えます。動ひずみ計はとても感度の高いアンプなので、小さな加速度の測定が可能です。筆者はトラックに載せた装置の振動測定に用いたことがあります。
渦電流式変位センサー
図7に、「渦電流式変位センサー」の測定原理を示します。センサーヘッドには高周波の交流電流が流れていて、電源回路とコイルとは共振状態にあります。センサーヘッドは高周波磁界を作っており、金属を近づけると金属側に渦電流が流れます。渦電流は金属板を通過する磁束をキャンセルする方向に流れます。図7下側に等価回路を示します。渦電流側の回路はインダクタンスと抵抗の直列つなぎです。センサーヘッド側の電源回路には自己インダクタンスL1と相互インダクタンスMがつながっている状態になります。共振回路は金属板がない状態で共振状態となるように作られているため、金属板を近づけると共振回路から見たセンサーヘッドのインピーダンスが変わり、共振状態から外れ共振回路の振幅が小さくなります。この振幅を測定することで、センサーヘッドから金属板までの距離の変化を測ります。
測定周波数範囲はDC〜3.3[kHz]まであります。金属の種類によって等価回路の抵抗成分Rが変わるので、測定対象が変わるたびに校正が必要です。校正時にはセンサーヘッドと金属板との距離を0[mm]、0.5[mm]、1.0[mm]にする必要があり、距離0[mm]は密着させればよいのですが、その他の状態を精度良く実現するのは少し困難です。筆者の場合、高精度に加工した0.5[mm]、1.0[mm]のセラミック板をスペーサーとして使っていました。
加速度センサーは測定対象に貼り付けるだけでよかったのですが、変位計はそういう訳にはいきません。変位計を絶対に動かない基礎になるものに固定する必要があるのです。図8のような手段が考えられますが、こんなものはダメです。マグネットスタンドからひょろひょろっと伸ばした腕の先にセンサーヘッドを付けていると、これは片持ち構造となるのでセンサーヘッド側が簡単に振動してしまいます。この結果、測定対象の振動変位にセンサーヘッドの振動変位が加わったものを測定することになり、何を測っているか分からなくなります。変位測定ではセンサーを購入するだけではなく、センサーヘッドの固定手段をしっかりと設計、製作しておく必要があります。
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