小型センサーで足の動きを正確に解析、バンダイが子供向けスマートシューズ発売:イノベーションのレシピ
バンダイは2023年7月6日、加速度などを測定するセンサーユニットを搭載した子供向けスマートシューズ「DIGICALIZED」を同月15日に販売開始すると発表した。
バンダイは2023年7月6日、加速度などを測定するセンサーユニットを搭載した子供向けスマートシューズ「DIGICALIZED(デジカライズ)」を同月15日に販売開始すると発表した。専用スマートフォンアプリと連動させることで、子供が楽しみながら運動習慣を身に付けやすい環境づくりを目指す。
セイコーエプソンが開発に協力
DIGICALIZEDは「超体感型スマートシューズ」というコンセプトで開発されたスマートシューズだ。製品の企画開発はバンダイが担い、センサーユニットと測定アルゴリズムの開発はセイコーエプソンが協力した。専用スマートフォンアプリの開発では、没入感向上や子供の運動習慣の定着化促進のために、東京大学 名誉教授の深代千之氏が監修協力している。
センサーユニットはシューズのインソール下にあるポケットにセットして使用する。セットするのは右足のみで、右足のシューズを左足のシューズに大きく3回打ち付けると、センシングが開始する。
センサーユニット内の加速度センサーとセイコーエプソンのモーションアルゴリズムである「M-Tracerテクノロジー」を組み合わせることで、歩数や速度、ジャンプの高さや方向に加えて、キックやスイング、回転などといった足の動きの正確な解析、判定が可能になった。これらのデータをスマートフォンアプリにリアルタイム通信で送信する。シューズ着用時にスマートフォンを持ち歩かなくとも、センシング後にスマートフォンを何回かシューズに当てる動作で蓄積したデータを送信する機能もあるという。
専用アプリケーションでは、音の精霊が住む「ソールワールド」を舞台に、歩数に応じてソールを集める「パズルゲーム」、5つのミニゲームが遊べる「オソトプラクティス」、パルクールのような動きやダンスのようなリズムゲームを楽しめるショートストーリー形式の「クエスト」などの各種モードが体験できる。アプリケーションは今後順次アップデートしていく予定だ。
右足のみにセンサーを搭載する理由について、バンダイ ファッションブランド事業部 事業戦略チーム マネージャーの中澤洋介氏は「片足だけで複雑な動きを計測できるようになったのは、M-Tracerテクノロジーの働きが大きい。両足にセンサーを搭載すると、通信同期などでデータ処理が複雑になりかねないのでそれを回避した。片足分のセンサー購入で済むので、経済的負担も抑えられる」と説明した。
DIGICALIZEDのカラーリングは全12種類で価格は通常モデルが4950円(税込み)、高機能モデルが5390円(同)。靴のサイズはモデルによって異なるが、19〜25cmまでが用意されている。重量はセンサーユニット込みで約240g。
シューズはかかとをしっかりと押さえつつ、つま先側に余裕を持たせる構造になっている。指先を動かしやすくすることで子供の足の成長に支障をきたさないよう配慮した。
センサーユニットは別売りで3300円(税込み)。全国のイオン系シューズ販売店であるGreenbox、ASBee、ASBeeKIDSにおいて、沖縄の一部店舗を除いて購入できる。センサーのサイズは41×26×9mmで、重量は約9g。リチウムコイン電池で動作し、電池は交換可能。6軸加速度センサーを搭載しており、Bluetooth5.0でスマートフォンと通信する。IP55の生活防水性能も備えている。
DIGICALIZEDの開発背景には、国内の子供の体力低下や外遊び機会の低下などへの課題意識がある。他方で、子供たちの間ではスマートフォンやタブレット端末が急速に普及しており、これらを活用して「楽しみながら運動習慣を身に付ける」環境づくりを目指している。中澤氏は「トレーニングということではなく、あくまで楽しむ中で運動習慣を身に付けられるような仕組みづくりを狙った」と語る。
バンダイは2018年に「国内初」(同社)である小学生向けスマートシューズ「UNLIMITIV(アンリミティブ)」を市場投入し、累計75万足の販売実績を達成した。DIGICALIZEDでは専用アプリケーションの世界観刷新や、リアルタイム通信の実現といった点でアップデートが加えられている。バンダイはDIGICALIZEDについて、2023年度中に約22万足の出荷を目指すとしている。
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