独米日の融合で唯一無比へ、インフィニオンが2024年に次世代マイコンを投入:組み込み開発ニュース
インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは、東京都内で開催したセミナーイベント「Infineon MCU Partner & Solution Day 2023」において、同社の産業/民生向けマイコンの事業戦略について説明した。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2023年7月6日、東京都内で開催したセミナーイベント「Infineon MCU Partner & Solution Day 2023」において、同社の産業/民生向けマイコンの事業戦略について説明した。2020年4月のサイプレス(Cypress Semiconductor)買収から3年が経過し、インフィニオンとサイプレスだけでなく、サイプレスの傘下にあった富士通のマイコン事業も含めた産業/民生向けマイコンのリソースを融合した開発体制の構築が完了し、2024年の早い段階から産業向けブランドの「XMCシリーズ」、民生向けブランドの「PSoCシリーズ」の次世代品の投入を開始する方針だ。
インフィニオンにおいて、産業/民生向けマイコンやセキュリティICなどの製品を展開しているのがCSS(コネクテッドセキュアシステムズ)事業である。インフィニオン全体の2022年度の売上高142億ユーロ(約2兆2191億円)のうち、CSS事業は約13%を占めている。インフィニオン テクノロジーズ ジャパン CSS事業本部 本部長の針田靖久氏は「インフィニオンでは、2027年度まで年平均10%以上の成長を目指しているが、その成長エンジンとして電動モビリティに次いで期待されているのがIoT(モノのインターネット)だ。世界全体のIoTデバイスの出荷個数は。2021年の55億個から2026年には91億個に増加する見込みで、これは年平均成長率では11%に相当する。CSS事業としては、産業/民生向けマイコンを中心にスマートで信頼できるソリューションを通じて、IoTによるコネクテッドな世界の実現をサポートしていく」と語る。
産業向けマイコンではSiC/GaNデバイスとの連携を重視
サイプレス買収以前にインフィニオンが展開してきた非車載のマイコンが、産業向けのXMCシリーズである。そこに、民生機器のHMI(Human Machine Interface)などで広く採用されてきたサイプレスのPSoCシリーズと、日本国内の産業機器向けで実績のある富士通の「FMシリーズ」が加わった格好だ。これら3つのポートフォリオそれぞれが持つ強みを融合して、新たな製品を展開するための体制を構築することがCSS事業に求められていた。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン CSS事業本部 IoTインダストリアル部 ディレクターの細田秀樹氏は「サイプレス買収から3年が経過し、新製品をどんどん出していく体制構築が完了した。ドイツの質実剛健さ、米国の先端技術とトレンドをけん引する力、日本の高品質と顧客有線の考え方を融合させ、唯一無比のマイコンベンダーになっていけると確信している」と意気込む。
次世代品は、産業向けが「XMC Next」と「XMC Next Evolution」、民生向けが「PSoC Next」と「PSoC Next Connected」と現時点で全て仮称となっているが、2024年の早い時期の投入に向けて設計は既に完了しているという。
4製品とも、Armの「Cortex-Mシリーズ」を採用することが決まっており、XMC Nextを除きマルチコア構成になる。現行製品では「Cortex-M4」を中心に「Cortex-M0+」をサブコアとして組み合わせているが「次世代品という位置付けなので、より新しい世代のCortex-Mシリーズを採用することになるだろう」(細田氏)という。
なお、「FMシリーズ」などの富士通系のマイコンについては、ユーザーサポートは継続するものの今後新製品は投入しない方針である。
インフィニオンと言えば、パワー半導体に強みがあることで知られているが、CSS事業ではパワー半導体を取り扱っていない。ただし、インフィニオンが注力している次世代パワー半導体のSiC(シリコンカーバイド)/GaN(窒化ガリウム)デバイスは、従来のIGBTなどのシリコンパワー半導体と比べてスイッチング周波数が高い。「最適な制御にはマイコン側の対応も必要になるので、今後はSiC/GaN対応を進めていく」(針田氏)としている。
産業向けでXMCシリーズ、民生向けでPSoCシリーズを展開していくことになるが、統合開発環境についてはPSoCシリーズで実績を積み上げた「Modus Toolbox」に統一していくことになる。サードパーティーの開発環境とも連携を図ることでソフトウェアの移植性を高めて、顧客にとって使い勝手のよい統合開発環境として浸透を図っていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 半導体産業に絡む円安の思惑、日本の半導体政策に掛かる期待
インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2022年7月7日、オンラインとリアル会場のハイブリッドでセミナー「Infineon MCU Partner & Solution Day」を開催した。基調講演にはOmdia シニアコンサルティングディレクターの南川明氏が登壇し、「新たな成長期に入ったエレクトロニクス/半導体市況展望」と題して、今後の半導体産業に関する見通しなどを披露した。 - 車載NORフラッシュにLPDDR4インタフェース搭載、ソフトウェア定義型車両に対応
インフィニオン テクノロジーズが、業界で初めてLPDDR4インタフェースを搭載したNORフラッシュメモリ「SEMPER X1」について説明。ソフトウェア定義型車両に対応できるように、従来比でデータ転送速度8倍、ランダム読み出し速度20倍を実現したという。 - 量子耐性を備えたPQCアルゴリズムを搭載、インフィニオンがTPMの新製品
インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは、同社でマイコンやセキュリティICなどを展開するCSS(コネクテッドセキュアシステムズ)事業の概況を説明するとともに、量子コンピュータ時代に対応する新世代のTPM(Trusted Platform Module)製品「OPTIGA TPM SLB 9672」を発表した。 - インフィニオンが電動車向けSiCパワーデバイスを強化、武器はIGBTからの移行しやすさ
インフィニオンは、EV(電気自動車)向けのSiCパワーデバイスの展開を本格化させる。これまでハイブリッド車(HEV)など電動車向けに100万個以上の出荷実績があるIGBT搭載のモジュール「Hybrid PACK Drive」にSiC搭載版を用意し、自動車メーカーがこれまでと同じフットプリントのままインバーターをアップグレードできるようにする。 - 独ドレスデンにパワー半導体の新工場建設、インフィニオンが過去最大7200億円投資
Infineon Technologiesは、ドイツのドレスデンに、アナログ、ミックスドシグナル、パワー半導体の300mmウエハー工場を新たに建設する。総額約50億ユーロという、同社単独では過去最大金額の投資となる。 - インフィニオンが300mmパワー半導体新工場を稼働、熱や水素を循環させCO2削減
ドイツのインフィニオン テクノロジーズは2021年9月17日、オーストリア フィラッハの敷地内に薄型の300mmウエハーを使用したパワーエレクトロニクス向けチップの最先端工場を正式にオープンしたと発表した。投資額は16億ユーロ(約2057億円)。