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モノづくりにおける“真のペーパーレス化”の実現に向けてサステナブル設計とデジタルモノづくり(3)(2/2 ページ)

地球環境に配慮したモノづくりの実践はあらゆる企業に課せられた重要なテーマの1つだ。本連載では、サステナブル設計の実現に欠かせないデジタルモノづくりにフォーカスし、活用の方向性や必要な考え方などについて伝授する。連載第3回は「モノづくりにおける真のペーパーレス化」について解説する。

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ペーパーレス化を進めるために

 ペーパーレス化の取り組みは、デジタル技術の発展や働き方改革、法改正の影響などにより、徐々に進んではいますが、日本では「紙文化」や「ハンコ文化」が根強く残っていることもあり、海外と比べて遅れているのが現状のようです。

 ペーパーレス化が進まない背景には、「経営者のITリテラシー不足」「従業員のツールや業務フローが変わることへの不安」「システム導入にコストがかかる」といった課題があります。

 これまで紙文化が当たり前だったため、ペーパーレスな働き方に抵抗を感じる人も少なくないでしょう。特に、製造業の現場の人に多いかもしれません。しかし、今までと同じことをやっていては、市場や環境の変化に対応できずに企業の存続が難しくなってきます。

 また、ペーパーレス化は、トップダウンで一方的に推し進めるのではなく、現場で働く人たちの理解と協力を得ることが何より重要です。ペーパーレス化によって、業務効率化が図れ、働く自分たちの作業負担やコストが減り、利益が上がり、さらには自分たちの給料が上がる――といったメリットを説明し、理解してもらうことで、ペーパーレス化の推進力が増していくはずです。そして、環境への配慮、サステナブルなモノづくりにつながることも啓蒙(けいもう)し、社員の理解を深め、取り組みを加速すべきです。

 ペーパーレス化は目標達成の手段であって、それが最終目標ではありません。ペーパーレス化を実現した結果、最終的に企業としてどうありたいかを目標に据えましょう。目標設定を誤ってしまうとペーパーレス化は達成できても、実はムダな作業が増え、社員が疲弊してしまうかもしれません。

 一度に全てをペーパーレス化するのが難しい場合は、段階的に取り組んでいくことで、負荷を分散できます。まずは、簡単にできる部分から取り組んでみることです。例えば、図面や資料のデジタル化から始めるのもよいでしょう。始めやすいところから取り組んでみて、問題点や課題を見つけ、PDCAサイクルを回し、目標達成を目指しましょう(大変ではありますが、一番効果が出そうな部分から取り掛かるという考え方もあるでしょう)。

 ペーパーレス化を進めるに当たり、システムやツール導入の必要性も当然出てきますが、それらを導入しただけではうまくいきません。きちんと管理/運用ルールを決めて、推進していきましょう。

 モノづくりにおけるペーパーレス化は、効率化、生産性向上、品質改善、コミュニケーションの円滑化など、多くのメリットをもたらします。その一方で、セキュリティ対策、プロセスの変革と管理、社員への啓蒙/教育といった取り組むべき事項もたくさんありますので、きちんと計画を立てながらペーパーレス化を推進していきましょう。 (次回へ続く

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール

小原照記(おばら てるき)

いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。


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