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モノづくりにおける“真のペーパーレス化”の実現に向けてサステナブル設計とデジタルモノづくり(3)(1/2 ページ)

地球環境に配慮したモノづくりの実践はあらゆる企業に課せられた重要なテーマの1つだ。本連載では、サステナブル設計の実現に欠かせないデジタルモノづくりにフォーカスし、活用の方向性や必要な考え方などについて伝授する。連載第3回は「モノづくりにおける真のペーパーレス化」について解説する。

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 デジタルモノづくりを進める上で目標とすべきことの1つが「ペーパーレス化」です。ペーパーレス化の実現は、コスト削減や業務効率化だけでなく、環境に配慮したサステナブルな取り組みにもつながります。今回は“モノづくりにおける真のペーパーレス化”について紹介します。

⇒ 連載バックナンバーはこちら

ペーパーレス化の必要性

 ペーパーレスとは「紙(ペーパー)」を「なくす/減らす(レス)」ことです。図面や書類などを、紙ではなくデジタルデータとして保存し、活用することが、ビジネスだけでなく、サステナブルな観点からも重要になっています。

 ビジネスにおいて、ペーパーレス化の実現は、紙の購入や印刷、郵送などにかかるコストを抑えることができます。情報管理の面でもデジタルデータであれば、検索や共有が容易に行えるため、業務効率を向上させ、コミュニケーションの活性化にもつながります。大量の紙を保管する場所も不要になります。また、テレワークや多様な働き方に対応する上でもペーパーレス化は必要不可欠といえます。

 サステナブルの観点では、紙の使用をやめることで、森林伐採や廃棄物を減らし、印刷や郵送、ゴミ焼却にかかるCO2排出量の削減につなげられ、環境負荷の軽減に貢献できます。

 ペーパーレス化の実現は、ビジネスだけではなく、サステナブルな面でも効果があり、働く人たちのより良い環境づくりにもつながります。

「図面レス」なモノづくり

 設計業務におけるペーパーレスの代表が「図面レス」、つまり“3Dモデルを「正」としたモノづくり”です。

 2D図面を紙ではなく、DXFやPDFなどのデジタルデータで保存し、閲覧をPCやタブレット端末で行うことも立派なペーパーレス化の取り組みですが、“真のペーパーレスなモノづくり”とはいえません。筆者が考える真のペーパーレスなモノづくりとは、2D図面を作らないモノづくりを意味します。

 2D図面の作成には多大な労力を必要とします。一般的な3D CADには、3Dモデルを設計した後に2D図面を作成する機能がありますが、投影図や断面図を配置して、寸法(サイズ)などの情報を入力するのは非常に手間です。

 3Dデータを閲覧できるViewer(ビュワー)を活用し、社内外で3Dデータを確認してデザインレビューを実施したり、さらには製造指示を行ったりなど、紙を使わない3Dデータ(デジタルデータ)をフル活用した効率の良いモノづくりが真のペーパーレスなモノづくりです。

 「3D図面(3DAモデル)」というものをご存じでしょうか? 3D図面とは、3Dモデルを「正」とした図面方式で、これまで2D図面に記載していたさまざまな製造情報(寸法や公差など)を、3D CADで作成した3Dモデルに直接、付加/定義したものになります。

 3Dモデルに直接付ける寸法や記号などの注記のことを「3Dアノテーション」と呼びます。また、3Dモデルに付加する製造情報のことを「PMI(Product Manufacturing Information)」、3DモデルにPMIを定義することを「MBD(Model Based Definition:モデルベース定義)」といいます。

「SOLIDWORKS」でMBDを定義している画面例
図1 「SOLIDWORKS」でMBDを定義している画面例[クリックで拡大]

 3Dモデルを作成し終わってから、寸法や記号などの3Dアノテーションを付加するとなると、「2D図面を作成するときの手間とあまり変わらないのでは?」と思われる方もいるでしょう。しかし、3Dモデルを作成している途中で付加した情報を表示させたり、必要な箇所だけに追加で情報を与えたりすることで、2D図面を作成していたときよりも作業時間を短縮できます。また、形状の全ての寸法を付加するのではなく、外形寸法や製造する後工程の人たちが必要な箇所だけに3Dアノテーションを付けるなど、業務の進め方そのものを変えていくことも必要です。

 3Dアノテーションが付加された3Dモデルは、無償の3Dビュワーソフトで確認したり、「3D PDF」として書き出すことでAdobeの無償PDFビュワーソフト「Acrobat Reader」で閲覧したりできます。

 最近では、Microsoftの「Word」や「Excel」などのドキュメント上に3Dモデルを張り付けて、グリグリと動かしながら形状を確認することも可能です。さらに、ビュワーソフトによっては、Excelの部品表と連携させて、部品名のセルをクリックするとその部品を3D表示したり、組み立てや分解の動きと連動して構造を確認できたりといった使い方ができます。

(左)「eDrawings」で3D図面を確認している例/(右)「Excel」に3Dモデルを挿入している例
図2 (左)「eDrawings」で3D図面を確認している例/(右)「Excel」に3Dモデルを挿入している例[クリックで拡大]

 3D CADで作成した3Dモデルは、閲覧するだけでなく、CAMで加工プログラムを作成し切削加工を行ったり、組み立て検討や指示書を作成してタブレット端末で閲覧したり、検査などの生産現場の自動化につなげたりなど、幅広く活用することが可能です。部品加工を外部に依頼する場合も、3Dデータのみで見積もり/発注できるプラットフォームサービスがありますので、見積もり依頼の図面や関連書類を作成することなく、ペーパーレスでやりとりできます。

 2D図面での業務が残っているようであれば、ぜひ一度、3Dデータを活用した真のペーパーレスなモノづくりに変えることができないか検討してみてください。

 3Dデータを社内全体で活用できれば、モノを作ってからの不具合や、それに伴う手戻り作業が減り、品質向上、納期短縮、コスト低減につなげられます。また、3D CADをはじめとする3Dツールを使用することで、2D図面では難しかったことができるようになり、競争力のある、より良いモノづくりの実現も可能となります。

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