電子デバイストップ目指すパナソニックインダストリーの材料、中国、合従戦略:FAインタビュー(2/2 ページ)
パナソニック インダストリーは2023年6月14日、代表取締役 社長執行役員 CEOの坂本真治氏への合同取材に応じた。坂本氏はリーマンショック以来の厳しい市況という見方を示しながら、今後の成長に向けた取り組み、考えを語った。
中国インサイダー化とグローバル最適化
人件費の高騰などを受けて省人化ニーズが高まっているのが中国市場だ。2021年にSBU(Strategic Business Unit)を作ると、2022年にはBUへと格上げした。マネジメントや商品開発の現地化を進め、現地部材、設備をフル活用して成長を目指している。一方で、中国を巡っては米国との摩擦によるデカップリングのリスクもある。
「われわれに限らず、JEITA(電子情報技術産業協会)に登録している日本の電子デバイス関連企業の中国販売割合は30%前後ではないか。30%の割合を占め、今後成長していく市場が重要ではないはずがない。一方で、地政学の問題も厳然たるリスクとして存在する。リスクに目をつぶるつもりはないが、過度に反応するつもりもない。中国域内の製品、サービスの提供は中国の中で自己完結できるようにする。それをわれわれは中国インサイダー化と呼んでいる。設計、開発、販売、サービスなど全部中国で自己完結を目指したい」(坂本氏)
ただ、中国は輸出拠点として大きな役割を果たしてきた側面もある。そこで中国域外についてはグローバル供給体制の最適化を図る。「シェアが50%を超えてくると製品の供給責任も生じる。中国域外の企業から心配されないよう、中国プラスワンとして過度に集中しないようにする」。
既にさまざまな手を打っている。グローバルで50%を超えるシェアを持つというxEV用フィルムコンデンサーは日本のデバイス事業部 富山(富山県砺波市)と同松江(島根県松江市)、中国のパナソニック エレクトロニックデバイス江門で主に生産してきたが、欧州でのパナソニック デバイス スロバキアでの生産を強化している。
車載リレーでは中国からベトナムへ一部移管する。「中国域内の企業には従来通り中国の工場から供給し、中国域外の企業にはベトナムから提供する」。サーボモータに関しても中国への集中を避け、次世代製品はパナソニック デバイスSUNX竜野(兵庫県たつの市)に量産ラインを立ち上げ、中国のパナソニック モータ珠海と2カ所で生産する。日本はマザー工場としての役割を担う。
売上高1兆8000億円達成に向けてM&Aもあり得るか
「MEGTRON」に代表される電子材料を持ち、高周波信号などの大容量、高速伝送を支える基板材料としてサーバや基地局などに使用されている。大型、狭ピッチ化が進む半導体パッケージ向けの基板材料や封止材なども手掛けている。それらにおいては、ソリューション提供に近い動きも起こっている。
「基板材料はプリント基板メーカーに納めるが、大きなスペックは最終顧客になる、エコシステムの一番上にいる企業と決めている。同じことが半導体でも既に起きている。サブストレートを軸にしながら、上下の材料メーカーと手を握ながら進めている。精度の要求が高まると反りは致命的な問題になる。われわれの材料が反らなくても、上にある材料と収縮率が違えば反ってしまう。難しくなればなるほど、自分たちの材料だけで解決できる領域は限られてくる。そこを見越して、資本関係を持つばかりではなく、材料メーカー同士でアライアンスを組んで、協業していくことでユーザーにもわれわれにもメリットがある。そういう仕組みを作ることから始める必要があると思い、スタートしている」(坂本氏)
2030年の売上高1兆8000億円の目標に向けては、M&Aなどの選択肢も残しているという。
「2030年までにもシリコンサイクルをベースにしながら厳しい時期は必ず来る。オーガニックの成長だけで1兆8000億円の売上高が成し遂げられるような内部的な組み立ては持っているが、オーガニックの成長以外の選択肢も残しておかないと目標達成は担保できない。これまでその選択肢をあまり使わなかった事業グループだが、これからは積極的に使おうと、何を手に入れなければいけないのか、あるいは協業しなければいけないのかといったロングリストを用意し、四半期ごとに更新している。こういった選択肢を使わなければ2030年に業界トップ企業になれない」(坂本氏)
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