77GHz帯だけじゃない、ミリ波レーダーが開く車載センサーの可能性:人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜
車載のミリ波レーダーと言えば、先行車両の検知に用いられる77GHz帯の製品が広く知られている。「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」では、村田製作所と京セラが、それとは異なるタイプの車載ミリ波レーダーの展示を行った。
ADAS(先進運転支援システム)や自動運転システム向けをはじめとして、自動車には多数のセンサーが搭載されるようになっている。中でも車載のミリ波レーダーと言えば、先行車両の検知に用いられる77GHz帯の製品が広く知られている。「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」(2023年5月24〜26日、パシフィコ横浜)では、国内の大手電子部品メーカー2社が、それとは異なるタイプの車載ミリ波レーダーの展示を行った。
村田製作所は、ミリ波レーダーモジュールソリューションとして、車室内向けの60GHz帯と車両外向けの79GHz帯の両方で提案を行った。車室内向けの60GHz帯製品は、子供置き去り検知、シートベルトリマインダー、エアバッグコントローラーなどに適用できる。子供置き去り検知では、1個のモジュールで3列シート車をカバーできる検知範囲の広さが特徴となっている。
一方、車両外向けの79GHz帯製品は、駐車支援や高速道路での車線変更などで車両の側方を検知する用途で用いられる。この他、車両下部に足をかざすだけでパワースライドドアやトランクの自動開閉を可能にするキックセンサーとしての用途も想定している。独自の高分解能アルゴリズムで3Dイメージング性能も向上しているという。
展示では、60GHz帯製品の評価用デモキットのミリ波モジュールを披露した。アンテナや制御ICなど全ての構成要素が27.0×25.0×3.1mmの小型モジュールに集積されている。この評価用デモキットを起点に、筐体設計や認証のサポートを顧客に提供し、早期の商品化につなげられる体制を整えている。
非接触で高精度に心拍データを測定できる
京セラは、60GHz帯のミリ波レーダーで高精度なドライバーモニタリングを行える「非接触ミリ波センシング技術」を紹介した。
カメラなどを用いたドライバーモニターシステムが、長時間運転の機会が多いトラックやバスなどへ搭載されつつある。また、ドライバーにスマートバンドを装着させることで体調を管理しようという取り組みも始まっている。ただし、カメラベースのシステムは太陽光などによる外乱の影響が、スマートバンドは装着が煩わしいことが課題になる。
京セラの非接触ミリ波センシング技術は、独自の材料技術と信号処理技術により、高い時間分解能で心拍間隔のセンシングを行える。この高精度に測定した心拍データに基づいて、ドライバーの疲労や眠気の兆候、体調の急変などを検知することが可能だ。芝浦工業大学と非接触ミリ波センシング技術を用いた覚醒度レベルに関する共同研究も行っている。
展示デモでは、車両の運転席を模擬したシートにミリ波モジュールを設置し、測定した心拍間隔のセンシングを見られるようにしていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ミリ波レーダーの進化版「4Dイメージングレーダー」、自動車と介護の見守りに提案
「4Dイメージングレーダー」を手掛けるイスラエルのVayyar Imagingの日本法人Vayyar Imaging Japanは2022年6月15日、日本での事業戦略を発表した。Vayyar Imagingは2022年2月に日本法人を設立。日本では、介護での見守りと自動車用の2つに注力する。 - デンソーのミリ波レーダーとカメラが第3世代へ、小型化と性能向上が加速
デンソーは2022年1月14日、ADAS(先進運転支援システム)向けのミリ波レーダーとカメラのパッケージ「Global Safety Package 3」を開発したと発表した。 - ミリ波レーダーで振動の非接触測定を実現、故障を予知する「CbM」向けに展開
アナログ・デバイセズがモーターなどの振動の変化から不具合発生を事前に検知できるCbM(状態基準保全)用のミリ波レーダー「miRadar CbM」について説明。さまざまなレーダー製品を手掛けるサクラテックと共同開発したもので、CbMで広く用いられている加速度センサーを搭載する振動計と異なり、非接触で振動を計測できる点が最大の特徴となる。 - カメラやミリ波レーダーではなくWi-Fiで乗員モニタリング、村田製作所が開発
村田製作所は、「CEATEC 2021 ONLINE」(2021年10月19〜22日、オンライン開催)において、自動運転システムやADAS(先進運転支援システム)向けのセンサーや関連技術を出展する。 - 低伝送損失化と多層化を同時に実現、パナがミリ波レーダー向けの新基板材料開発
パナソニック インダストリアルソリューションズ社は2021年2月25日、ADASなどに用いられるミリ波帯アンテナ向けの、熱硬化性樹脂を用いたプリプレグ「ハロゲンフリー超低伝送損失多層基板材料」を販売すると発表。アンテナの低伝送損失化と多層化を同時に実現する。 - ミリ波レーダーに「60年に1度のパラダイムシフト」、高周波アンテナで新構造
日本電産は2019年4月12日、滋賀技術開発センター(滋賀県愛知郡)で説明会を開き、次世代高周波アンテナ技術について発表した。プリント基板を用いる従来のパッチアンテナとは異なり、金型成形で製造した金属製の導波路を重ねて3次元で配置する。これにより導波路損失やアンテナ効率をパッチアンテナの性能から改善するとともに、性能安定性を高めることができるという。