安価な新触媒でCO2からブタジエンゴムを合成、TOYO TIREが2029年までに実用化へ:脱炭素(2/2 ページ)
TOYO TIREはCO2を原料としたブタジエンゴムの合成に成功した。今後は、2029年までの実用化を目指し、量産化に向けた触媒システムの開発を進める。
新手法開発の経緯とは?
自動車タイヤの原材料は、タイヤの品種によって異なるが約50%をゴムが占める。このゴムの内訳としては、天然ゴムの約60%に対して、スチレンブタジエンゴム(ブタジエンゴムにスチレンモノマーを重合したもの)やブタジエンゴム合成ゴムといった合成ゴムが約30%となっている。
さらに、これまでのブタジエンゴムの製造方法は、ナフサを約900℃の高温で蒸留し、ブタジエンを生成する。続いて、ブタジエンを溶剤で溶かし、重合して、ブタジエンゴムを生産するため、石油を使用するだけでなく、消費エネルギーも多かった。
こうした背景から、タイヤ業界では石油以外の天然素材由来の原料によってブタジエンゴムを実現する手法の模索が活発化している。
一方、富山大学は、温室効果ガスの1つであるCO2の再資源化を目的とした高性能触媒の開発を行っている。
そこで、TOYO TIREは、タイヤ材料の主成分として多用するブタジエンゴムの生成で、CO2そのものを石油由来の原料から代替適用できないかと考え、富山大学の椿氏と共同で新手法の開発を2016年に開始して、新手法の開発に至った。
椿氏は、「単価が高く、市場規模が大きいタイヤは、CO2の出口として有効だ。タイヤ製品をターゲットとすることは、電気自動車や従来型内燃エンジン車などの普及とは関係なく、その需要は安定的で、今回の手法も継続的に使用されると見込んでいる」と述べた。なお、富山大学では、こういった研究の社会実装を後押しする施設としてカーボンニュートラル物質変換研究センターを2021年4月に設立し、初代センター長は椿氏が務めている。
TOYO TIREでは、サステナブル素材を積極採用したプロトタイプのタイヤを装着したレーシングカーで、「ダカールラリー」「ニュルブルクリンク耐久レース」「D1グランプリ」といったレースも参加している。引き続き、モータースポーツへの参加に際して、同様の取り組みを行い、固有の走行条件下で得た知見をタイヤの量産技術にフィードバックして高性能で独自性がある製品の開発を展開していくという。
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