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欧州の自動車産業が始めるデータ共有、「Catena-X」とは?オートモーティブ インタビュー(2/3 ページ)

コロナ禍で見つかった課題や将来を見据えて動き出した「Catena-X」。これに込めた思いや狙いについて聞いた。

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透明性や中立性

MONOist 信頼以外にCatena-Xが重視する姿勢はありますか。

Heubach氏 信頼だけでなく透明性も重視しています。Catena-Xはオープンかつグローバルなネットワークなので、日本も重要な存在です。複数のエコシステムがバラバラに存在していてもうまく機能しないので、1つのグローバルで大きなエコシステムをつくって成功させたいと思っています。

 エコシステムが成功するには、競争ではなく協業が必要です。どちらの方がより価値があるかということもありません。半導体メーカーのデータと自動車メーカーのデータの価値は全く同じです。どちらが欠けても完成品が作れないからです。

 地域的な中立性も大切です。自動車のサプライチェーンはグローバルだからです。中南米から原材料が、日本から部品が……というようにさまざまな国や地域が関わるので、欧州のものでも日本のものでもない、地域に全く依存しない平等な中立性が必要です。

 しかし、自動車業界は他社と情報を共有したがらない傾向があります。そこには不信感があります。誰かがCatena-Xのネットワークを所有することになると、誰も信頼しなくなるでしょう。自動車産業だけでなくIT企業も同様です。分散型であることが重要です。

MONOist 自動車産業以外にどのような企業が参加しますか。

Heubach氏 SAPだけでなく、シーメンスやAWS、富士通、NTTなどソリューションを持った企業が参加しています。例えばSAPはCatena-Xのネットワークの接続部分を構築します。データ主権を100%守り、セキュアなデータ交換を実現していきます。それをベースにさまざまなビジネスアプリケーションも増えていくでしょう。そこにはさまざまなソフトウェア会社が貢献できると考えています。

 Catena-Xは7社のパイオニアカンパニーと、参加した28社でエコシステムを作り始めました。1年半が経過して、3つのリリースを出せるところまで進捗しました。合弁企業のCofinity-Xも動き出しています。リサーチではなく、本番を見せることができる段階にいます。

MONOist Catena-Xから参加する企業にどのような働きかけをしますか。

Heubach氏 Catena-Xからデータを提供する企業にお金を出すことは考えていません。また、追加のデータを入手するときにCatena-Xとしてお金をもらうことは考えていません。参加する企業がビジネスモデルとしてマネタイズすることはできます。

 誰にどのくらいデータを提供するかは、Catena-Xに参加する企業各社に決定権があります。データオブジェクト、材料のコードなど提供する範囲は細かく指定できるようにします。Catena-Xから何かを強制することはありません。自分たちでデータ共有をコントロールできるのも、従来のような中央集権的、一元的な関係とは違うところです。

 Catena-Xには「ここまでは共有する。その代わりに自分たちもこのデータが欲しい」というやりとりの中で生まれるWin-Winもあると考えています。市場の車両に欠陥が判明したときに、サプライヤーがその原因の情報を自動車メーカーに共有し、自動車メーカーは改修用にテレマティクスに関する情報をサプライヤーに提供する、といった場面がその例です。Win-Winが増えればさらにデータが共有され、エコシステムが成長できると期待しています。

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