設計者が学ぶべきデザイン基礎知識 〜かたちの対応付け〜:設計者のためのインダストリアルデザイン入門(4)(2/3 ページ)
製品開発に従事する設計者を対象に、インダストリアルデザインの活用メリットと実践的な活用方法を学ぶ連載。引き続き“設計者が学ぶべきデザイン基礎知識”として「かたち」をテーマに取り上げる。今回は「かたちの対応付け」についてだ。
デザイン活用の具体例
部屋のスイッチ以外の例でも対応付けを考えてみます。ここでは、ドライヤーのスイッチのデザインとその対応付けを検討するケースについて見ていきます。
ドライヤーは、一般的に風量と温度を調整する機能を持っており、これら2つの調節機能をハンドル付近に設置するものとします。
まずは悪い例を以下に示します(図3)。
縦長のスライドスイッチが2つ並んでいるこの例は、どちらが風量調節で、どちらが温度調節なのかの判断がつきません。もちろん、表記をすれば分かるかもしれませんが、ドライヤーを使いながら調節するのであれば、手元は見ずにこれが分かる方がスマートなデザインといえるでしょう。また、電源のオン/オフをどちらのスライドスイッチが兼ねているかが分かりづらいのも悪い点です。
一つ良い対応付けとしていえそうなのは、風量アップ、温度アップともにスライドスイッチを上げる(上にする)という操作に対応付けされている点でしょうか。もし、スイッチを下げた(下にした)のに風量が上がるようなことがあればユーザーは戸惑ってしまいます。
次に、比較的良いとされる例を以下に示します(図4)。
この例では、風量調節および電源スイッチをスライドスイッチ、温度調節スイッチをプッシュスイッチとして、その機能と操作方式を明確に分けています。また、風量調節が電源スイッチと連なっているのも対応付けとしては自然であると考えられます。送風と加熱の機能の主従関係は、送風が主である(加熱は送風される空気に対して行われる)ので、送風が停止すれば装置として電源が落ちることに違和感を覚える人はいないでしょう。
このデザイン、そして対応付けによって、ドライヤーの利用者はまずはスライドスイッチを操作するところから製品使用動作を開始し、スライドスイッチ動作によって送風が開始されることを認知します。また、スライドスイッチが複数水準設けられている場合、多くの利用者はそのスライドスイッチが風の強さも調節するものであるというメンタルモデルを構築します。さらに、もしも風が冷たかったのであれば残りのスイッチを押してみて、風が暖かくならないか試してみることでしょう。
つまるところ、この構成であれば多くの人は特に表示などを必要とせず、自然とドライヤーを使うことができそうです。この話が真実なのであれば、製品が想定していた概念モデルと利用者の概念モデル(メンタルモデル)が高い割合で一致しているといえます。
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