凸版印刷とNICT、耐量子計算機暗号対応のプライベート認証局構築など成功:量子コンピュータ
凸版印刷と情報通信研究機構とは、量子コンピュータでも解読が困難な耐量子計算機暗号対応のプライベート認証局構築と、同局における改ざん検知機能などの有効性検証に成功した。
凸版印刷と情報通信研究機構(NICT)は2023年3月14日、量子コンピュータでも解読が困難な耐量子計算機暗号(PQC)対応のプライベート認証局構築と、同局における改ざん検知機能などの有効性検証に成功したと発表した。
暗号通信の際には、電子証明書の管理などを担う第三者機関である認証局が通信の安全性を担保している。しかし、量子コンピュータ実用後には、現在採用されている公開鍵方式では解読されてしまう恐れがあり、新たにPQCを用いた対策が必要になってくる。
今回両者は、NICTが運用するテストベッド「保健医療用の長期セキュアデータ保管、交換システムH-LINCOS(H-LINCOS)」内において、カナダのISARAが有するPQC技術を活用したPQC対応のプライベート認証局を構築。電子署名、電子証明書発行機能の追加や、PQC対応のICカード「PQC CARD」との連携による改ざん検知機能を実装し、その有効性の検証に成功した。
具体的には、H-LINCOSにおいて、「PQC CARD」を用いた電子カルテデータへのアクセス制御をする際、PQC CARD内の電子証明書を検証することで本人であるかを確認。PQC対応のプライベート認証局が、PQCの電子署名アルゴリズム「CRYSTALS-Dilithium」を用いて電子証明書を発行する機能を構築した。
また、発行された電子証明書をPQC CARDに格納する機能を構築することで、H-LINCOSをより実際の運用場面に即したテストベッドへとアップデートした。
両者は今後、プライベート認証局などの関連技術を活用して2025年に量子セキュアクラウド技術の限定的な実用化を、2030年には本格的な提供開始を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ついに稼働「日の丸量子コンピュータ」、理研がクラウド経由で外部利用開始
理化学研究所は2023年3月27日、超電導方式を採用した国産量子コンピュータ初号機による「量子計算クラウドサービス」を開始した。 - ソフト・ハード両方で技術革新を、富士通が量子コンピュータの共同研究開始
富士通は2020年10月13日、理化学研究所など国内外の研究機関と共同で量子コンピュータの実現に向けて開発を開始したと発表した。量子デバイスなどのハードウェアと、アルゴリズム、アプリケーションやアルゴリズムなどソフトウェア両方の領域で共同開発を進めて、量子コンピュータ実用化の障壁となる課題解決を目指す。 - 「誤り訂正」なくても実用化可能か、IBMの量子コンピュータ開発ロードマップ
日本IBMは2022年6月29日、同社が同年5月に公開した量子コンピュータの開発ロードマップに関するオンライン説明会を開催した。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアや周辺機器なども併せて開発を進め、量子コンピュータの性能向上を図っていくとした。 - 量子コンピュータの力を古典コンピュータで引き出す、NVIDIAが統合基盤を発表
NVIDIAは、古典コンピュータと量子コンピュータ、双方の計算処理をシームレスに統合できるハイブリッドコンピューティングプラットフォーム「NVIDIA Quantum Optimized Device Architecture(QODA)」を発表した。 - 国産超伝導量子コンピュータ初号機が本格始動、クラウド公開で外部利用が可能に
理化学研究所、産業技術総合研究所、情報通信研究機構、大阪大学、富士通、NTTの共同研究グループは2023年3月27日から国産超伝導量子コンピュータ初号機をクラウドに公開し、外部からの利用を開始すると発表した。