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宇宙のロボット技術で農業を楽にしたい、東北で挑むイスラエル生まれの起業家ワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(3)(3/4 ページ)

本連載では、厳しい環境が続く中で伝統を受け継ぎつつ、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。今回は農業向けAIロボットを開発する「輝翠TECH」を取材しました。

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週末は東北でハイキング

――自然がお好きだと週末も外でお過ごしですか?

タミルさん 先週は山形の月山(がっさん)に行きました。この時期(5月)ですがまだ雪が残っているんです。山の上にはお寺がありますから、そこにも行きました。

――東北大学の近くにお住まいですか?

タミルさん はい、自転車で20分です。でも、普段はクルマか原付バイクで通っています。10分くらいです。

――社員の方々と一緒にランチされていますか?

タミルさん 私はベジタリアンですのでランチを自分で作って持ってくることが多いです。オフィスには数名メンバーがいますので一緒に食べることもあります。しかし、ほとんどのメンバーはリモートで仕事をしています。

――どんな国のご出身の方々がおられるのでしょうか?

タミルさん 米国、パキスタン、台湾、インドネシア、エストニア、オランダ、などさまざまな国の人たちがいます。日本人のビジネス担当もいます。

――全員で集まって食べに行くのは大変そうですね。

タミルさん 農家さんと実証実験するときにはみんな集まったりします。本当は直接会って話すことは一番いいと思います。チームビルディングも大切だと考えています。

果物の収穫体験を機に農業ロボットに関心が

――博士課程で日本に進学し、その後起業されましたが、就職ではなくなぜ起業を選ばれたのですか?

タミルさん 日本が好きですので日本で働きたいと思っていました。ただ、日本企業への入社は考えておらず、外資系に就職するか自分で起業するかが選択肢としてありました。

 また、日本の自然が好きで、宇宙ロボットと人工知能の技術を持っている自分が何ができるかも考えていました。

――そこで農業に出会ったんですね。

タミルさん 旅行で東北地域の果物の収穫体験に行きました。そこで農家さんのお話を聞く機会が何度かありましたが、ご年配の方の作業が大変そうで、身体的な負担が大きいと感じました。ロボットが実際に使われている現場というと工場と宇宙が多いですが、農業でも使われるようになるといいなと思いました。

 農業を自動化することにより労働を軽減し、生産性の向上を進めることで、農家の方々の持続可能性を支えたいと思い、私の持つ技術が役に立つのではないかと考えました。

――現在は、実際に運搬作業を担うロボットのプロトタイプを製作し、実証実験されているんですよね?

タミルさん はい、1号機を開発したあとに現在の2号機を開発しました。りんご農家での実証実験を行いましたが、今後は他の果樹園での実証実験も進める予定です。現在、次の3号機を開発中で、2022年の夏に農家の方々に提供して秋に収穫実験を行う計画です。その実験を基に2023年に製品化したいと思っています。

――対応する果物の種類を広げていくのですか?

タミルさん りんごだけではなく梨や桃などにも広げていきます。将来的には野菜にも広げていきたいです。年間の果物の収穫時期はまちまちですので、いろんな果物に対応できれば同じロボットを1年中使うことができます。

――収穫だけではなく他の作業もロボットで実現しようとしているのですか?

タミルさん 例えば、草刈りも非常に大変な仕事です。ロボットが代わりに草を刈ることで、農家の方々がもっと農業を楽しんで、かつ利益が出るようになればいいなと思います。

 また、農業に関するデータをロボットが収集し、農薬や肥料についてデータを分析することで農薬の量を減らすなどの対策もできるようになります。

――それらを1台のロボットで実現できるようにするのでしょうか?

タミルさん はい、1台のロボットをベースにオプションを追加する形で実現できたらよいと考えています。

世界の農業を変えていきたい


取材時のタミルさん[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞

――今後の展望を教えてください。

タミルさん 日本だけではなく世界の農業を変えていきたいです。ヨーロッパやアジアでも課題があります。例えば、台湾では日本と同じような課題を抱えています。そのような国でも私たちのロボットを活用して農業を楽にしていきたいです。農業を発展させることで、地域の経済が発展していってほしいと思っています。

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