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リチウムイオン電池の劣化を「容量低下」で片付けない:今こそ知りたい電池のあれこれ(20)(2/3 ページ)
今回は、分かるようで分からない電池の「劣化」とは何なのかをあらためて考えていきたいと思います。
劣化を整理する
これらは複合的に絡み合うものであるため、漏れなくダブりなく整理するのも難しいものですが、一例として各要素をまとめながら考えていきたいと思います。
発生要因は「通電劣化」と「経時劣化」の2つに大きく分けられ、それぞれの要因に対して、劣化の発生および進行を左右するパラメータが存在します。通電劣化であれば充放電電流や発生熱、経時劣化であれば電池がさらされる環境の影響や保管時の電圧などが考えられます。
発生箇所は言い方を変えれば「電池セルを構成する材料一覧」ともいえるかと思います。各材料が単独で劣化する場合もあれば、互いに作用し合って接触界面で発生する場合や複合材が形成された状態で発生する場合も考えられます。
測定結果は劣化の結果として観測される「電池特性の低下」です。SOHの減少である容量劣化(容量維持率の低下)やセルの膨らみである形状保持率の低下などは劣化を示す結果として比較的分かりやすいものではないでしょうか。
一般に電池の劣化というと、どうしても「容量劣化」(容量維持率の低下)を主体に語られがちですが、これらの測定結果には必ずしも相関性があるとは限らないというのは、電池の劣化を考える上で最も注意すべき点かと思います。
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