マルチフィジックス解析ソフトウェアの最新バージョンを販売開始:CAEニュース
サイバネットシステムは、マルチフィジックス解析ソフトウェア「Ansys 2023 R1」の販売を開始した。シミュレーション性能が向上した他、ワークフローの統合と自動化、製品開発工程全体の改善が図られている。
サイバネットシステムは2023年3月13日、Ansysのマルチフィジックス解析ソフトウェアの最新バージョン「Ansys 2023 R1」の販売と技術サポートを開始した。
Ansys 2023 R1はシミュレーション性能が向上した他、MBSE(Model-Based Systems Engineering)ワークフローが統合、自動化されており、製品開発工程全体を改善する新機能を提供する。
シミュレーションにおいては、「Ansys Mechanical」の新機能を活用して、解析に必要な計算量と時間をAI(人工知能)/ML(機械学習)で予測できるようになるなど、構造解析の正確性、カスタマイズ性が高まった。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)に拡張ソルバーアルゴリズムを採用したことで、より効率的に大規模で忠実度の高い解析を実行できるようになった。
また、複数成分の流体の混合状況を計算する化学種モデルと空間平均モデル(LES:Large Eddy Simulation)に、「Ansys Fluent」のマルチGPUソルバーを適用可能になった。多様なアプリケーションで複数のGPUを活用できるため、解析時間と消費電力を大幅に減らせる。
3D設計製品の「Ansys Discovery」は、薄板構造物をリアルタイムにシミュレーションする際の予測精度が向上。予測結果の信頼性が高まるとともに、GPUメモリ要件が最大で10分の1に削減している。
クラウド環境の利便性も向上している。「Ansys Gateway powered by AWS」では、仮想マシンやHPCクラスタの作成、サイズ変更が手早くできるようになり、社内環境へのアクセスもしやすくなった。
最新バージョンでは、日本のユーザーの声を反映して、特に光学製品の解析機能が強化された。「Ansys Zemax OpticStudio STAR」では、「Ansys Lumerical FDTD」へのダイナミックリンク機能を用いて、光学モデルの解析と最適化が可能に。また、「Ansys Speos」では、GPUソルバーによる光線追跡シミュレーション高速化を正式サポートし、「Ansys Lumerical」では厳密結合波理論(RCWA:Rigorous Coupled-Wave Analysis)ソルバーがGUIに対応した。
ワークフローの統合と自動化、製品開発工程全体の改善も図った。「Ansys Connect」では、新しい統合環境が追加され、操作性が向上。複数のチーム間で最新のプロセスやツールに、容易にアクセスできるようになった。
他に、「Ansys optiSLang」では、ワンクリックでシミュレーションを最適化し、最適な設計を迅速に検討できるようになった。「Ansys Granta」では、最適な材料を選択できるよう、クラウド上で利用できる材料のエコデータやツールが提供される。「Ansys Electronics」では、アンテナアレイシミュレーションが高速化しており、衛星通信や航空宇宙でのアンテナ設計を支援する。
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