製造業のアジャイル開発導入における6つのポイント【2】アジャイルを広める:製造業のためのアジャイル開発入門(3)(3/3 ページ)
複雑性/不確実性に対応するためソフトウェア開発業界で広く採用されている「アジャイル開発」の製造業での活用法を紹介する本連載。第3回は、製造業のアジャイル開発導入における6つのポイントのうち「アジャイルを広めていく」という観点から残りの3つを紹介する。
ポイント(6):社外の評判を使ってプレゼンスを上げる
概要
社外イベントに登壇し、社内でやっていることを社外に共有しよう。社外で評価されていることを社内のメンバーが知ることで、アジャイル開発に興味を持って話しかけてくれる人が増えてくる。
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状況
あなたはIT部門の開発部署の管理職である。部署に所属するメンバーは30人。社内で初めてアジャイル開発を導入することに挑戦し、今では5チームでアジャイル開発をしている。大規模アジャイル開発のフレームワークを参考にすることで、チーム間のコミュニケーションもうまくいっている。
アジャイル開発に対しては手応えを感じており、全社的にも広めていきたいと思っている。無理強いするつもりはなく、特に効果が出そうな部署から広がっていけば良いと思っている。まずは、われわれがやってきたことやアジャイル開発の魅力を社内でプレゼンしようと考えている。アジャイル開発の魅力に気付いてくれた人とつながり、そこから一歩ずつ広めていこう。
問題
残念ながら話を聞いてくれる人はほぼいない。社内で初めてアジャイル開発を導入し、成功しているとはいえ、まだ信頼に足るほどではないようだ。
周りの部署がアジャイル開発に興味や理解がないだけであればあまり問題なさそうだが、実際はさまざまな問題が起きてくる。例えば、リリースの際に品質保証チームが最終チェックを行っている場合、品質保証チームとの協力がなければ素早くリリースすることができない。さまざまな社内ルールの制約を受けることもある。
企画からリリースまでの全体の流れを改善するためには、アジャイル開発チーム以外のメンバーとのコラボレーションが必要である。
具体的なアクション
社外で評価されるようなアクションを行おう。具体的には社外のアジャイル開発のカンファレンスに登壇する、勉強会で登壇する、記事を書く、コミュニティーを運営する、などである。特に「Regional Scrum Gathering Tokyo」や「Agile Japan」といった日本トップクラスの規模のカンファレンスで登壇できると影響が大きい。社外で評価されているというお墨付きが社内での信頼につながるはずだ。社内の他のチームと関係を作るのに役立つだろう。
関係ができればチーム間でコラボレーションしていこう。コラボレーションの仕方は、前回記事のポイント(2)やポイント(3)を参照していただきたい。
実施後の結果
他チームとの協力により、今まで実施できなかった改善を実施できるようになった。リリース頻度の向上、品質の向上、手戻り作業の減少など、さまざまな良い変化が出始めるはずだ。
また、社内でも知名度が向上し、アジャイル開発について相談するなら、あなたやあなたの部署のチームが選ばれるようになるだろう。他の部署のチームがアジャイル開発を導入する時の支援が可能になり、全社的にアジャイル開発の推進が可能になる。
まとめ
本連載の3回目では、前回の続きということで製造業におけるアジャイル開発導入におけるポイントを3つ紹介しました。特に「アジャイルを広める」という観点のポイントを選んでみました。
製造業におけるアジャイル開発導入の相談を受けるときの“あるある”なのですが、非常に多くの企業が複数のチームを作り、大きく始める計画を立てています。また、50%の工数を従来のやり方で既存業務をこなし、残り50%の工数をアジャイル開発で新規プロジェクトをこなす計画もよく聞きます。これらのアプローチは効率が良さそうですが、実際は本編で書いたようにうまくいかないことが多いです。
どんな変化も小さな一歩から。ユーザーに喜んでもらえる状態をキープしながら広めていきましょう。ファーストチームの立ち上げ時は、有識者に相談するのも効果的だと思います。
次回は、6つのポイントを組み合わせてアジャイル開発を導入していくストーリーを紹介しようと思います。
筆者プロフィール
笹 健太(ささ けんた)
2018年にクリエーションラインに転職。他社のアジャイル、DevOps導入支援を通じて変革のお手伝いを行っています。前職は製造業でロボット制御ソフト開発を行っていました。
そこでスクラムを取り入れたことをきっかけにアジャイルに興味を持ち、今に至ります。
最近は個人向けのコーチングもやってます!
趣味はキャンプ、この頃ハマっているものはスプラトゥーン3です。
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