双日らが日本初の重希土類レアアース権益を獲得、国内需要の3割相当を確保へ:製造マネジメントニュース
双日と金属鉱物資源機構は、レアアース生産者のLynas Rare Earthsへの出資を決定した。出資に伴い、重希土類であるジスプロシウム、テルビウムを日本向けに供給する契約を締結。日本初の重希土類の権益獲得になるという。
双日と金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2023年3月7日、両社が共同で設立した日豪レアアースを通じて、レアアース生産者のLynas Rare Earths(ライナス)への2億豪ドル(約179億円)相当の出資を決定したと発表した。
今回の出資に伴い、双日とJOGMECは、ライナスが生産する重希土類であるジスプロシウム、テルビウムの最大65%を日本向けに供給する契約をライナスと締結した。これは国内需要量の3割程度に相当する。日本で初となる重希土類の権益獲得となり、新たな供給源を確保することで、日本向けレアアースの安定供給に貢献する。
レアアースは、軽希土類と重希土類に大別され、電気自動車や風力発電のモーター用磁石を中心にさまざまな産業で使用されている。ライナスは、これまでオーストラリアのマウントウェルド鉱山で軽希土類を生産し、主にモーター用磁石の主原料として日本向けに供給してきた。
ライナスは、今回の資金を活用し、ジスプロシウム、テルビウムの生産を開始する。双日は2011年に、ライナスが生産するレアアースの日本向け独占販売契約を締結しており、今回の出資により、軽希土類に加え、重希土類を日本市場向けに供給することが可能となる。
現在、ジスプロシウム、テルビウムは、中国のみで生産されているが、同出資により中国以外のサプライソースが加わることで、日本への安定供給の強化に寄与する。
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