「品質力は落ちている」と半数強が回答、現場担当者が懸念する3つの要因とは:品質不正問題(3/3 ページ)
MONOistでは2023年1月31日に「品質」に関するオンラインセミナー「転機を迎える製造業の品質と信頼」を開催し、187人の来場者にアンケートに回答いただいた。その中で現場での実情が見える内容について抜粋し、現場の課題感について紹介する。
品質問題は現場だけで解決する問題なのか
フリー回答で「品質に関する悩みごと、困りごとについて聞かせてください」と、現在の困りごとを聞いた質問でもおおむね、「品質が落ちている」とした3つの懸念点の内、「技術者のスキルと意識の問題」と「体制の問題」に関するものが多く挙がった。
「技術者のスキルと意識の問題」については、「管理担当者によって品質のレベル感が異なる」「人によって変わってしまう現実を打破できない」「人に関することが原因で発生する不具合が多いが、人に依存する部分がどうしてもなくならない。また、人を教育しても認識レベルや理解度がまちまちであり、人によって品質のばらつきも発生する」「カンコツの標準化、伝承」など、属人的な状況に対する悩み事が大きいことが伺えた。
また「作業者の品質に対する理解が低い」「結果良品だけを求めて、製造プロセスでの信頼性や作り込み品質への意識が希薄になっている」「意識、心理的要素への動機付け」など、複雑化する中で担当業務をこなすだけでなく、高い意識でモノづくりへの幅広い理解を求めるような声も多かった。
「体制の問題」としては、品質への人員や投資が少ないという点を指摘する。「品質について軽視されているような状態で、人員的に乏しい。またその結果教育も進まない」「人手と業務量のバランスが取れていない。変更が多い、決まりが遅いのが原因だと思われる」「品質管理を担当しているが、それ以外の仕事もかなりあり、品質向上に集中できない」「品質不良を発生させないための上流での対策、流出を防ぐ仕組みの構築が、コストとして切り捨てられる傾向にある」など厳しい環境への悩みが挙がっている。
また、今回のアンケートでは全体的に「設計者の技術力や意識」を問題に挙げる声も多かったが、その一方で設計の立場で求められる要求の高さに苦しむ声も出ていた。
「末端の取引先や生産設備のパラメータまで設計者自身が設定できれば理想であることは理解しますが、設計者自身は末端の知識まで持ち得ないケースがあると思います。このような場合も設計者が勉強して対応しないといけないのでしょうか。取引先のノウハウにかかわる部分もあると思いますが、そこまで踏み込まないといけないのでしょうか。例えば、樹脂部品の設計者が金型構造の詳細や成形条件を事細かに指定できなかったり、切削する際、刃物の選定、回転速度、送り速度などを指定できなかったりしますが、それは設計者の問題なのでしょうか」
現場の学習や成長は継続的に必要だが、「品質」の作り込みにはあらゆる工程が関わっている。さらに製品がより複雑化していく中で、設計者が個人の努力のみで作り込んでいくことが難しくなっているのは明らかで、悩める現場を支援していくことがこれからのモノづくりには求められている。
まずは、「体制の問題」を整備し、片手間の人員体制ではなく、人員や部門間での協力などの支援体制を用意する必要がある。さらに、品質が「上がっている」とした回答者が、製造装置やツールや手法の導入と活用を挙げていたように、こうした現場の悩み事の一部をツールで代替し、そこで生んだ余裕を、本質的なモノづくりの原理原則の理解や新たなモノづくりの仕組み作りにつなげていくことが重要になってきているのではないだろうか。
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