製造業の構造的品質問題を改善する「Closed-Loop Quality」とは:CLQ基礎解説(前編)(1/2 ページ)
国内外の製造業で品質問題が頻発している。原因はさまざまだが、実は構造化した問題による現場の疲弊も大きな要因になっている。その解決方法として提案されているのが、フィードバックプロセスを考慮したクローズドループの生産(CLM:Closed-Loop Manufacturing)と品質管理(CLQ:Closed-Loop Quality)である。
こんにちは。志田穣と申します。
昨今の製造業において、残念ながら品質に起因する重大な問題(インシデント)が著名なメーカーから報告されています。
- 日産自動車:国内車両製造工場での完成検査における不適切な取扱について(2017年9月)
- SUBARU:完成検査に関わる不適切事案について(2017年11月)
無資格者による完成検査、燃費・排ガスに関わる測定結果の改ざんなど根は深く、発生から1年以上経過していますが、いまだに完全な事態収束には至っていません。国土交通省は今回の件に関し、完成検査の現場のコンプライアンス意識の低さや、品質保証の一環としての完成検査の技術的意義に対する理解が欠如していたと指摘し、加えて過大な業務量など、会社の施策が不正を発生させるリスクや要因となっていたと分析しています。
世界的に見ても、品質問題におけるリコールは増大する方向にあります(図1)
トップから現場までのコンプライアンス意識の徹底はもちろん重要ではありますが、構造化した問題による現場の疲弊をどのように解決するかという視点も重要です。
製造業700社のトップマネジメントを対象とした品質管理に関するLNS Researchの調査によると、非効率な検査プロセス・品質管理の原因は以下のように捉えられています
- 品質管理に関するシステム・データソースの非統合(38%)
- 慢性的な品質管理に対する投資の抑制。部門最適
- 検査/測定の非効率性(34%)
- 技術と規定化されたプロセスの欠如
- 品質管理責任を全社のものと捉えておらず、品質管理部門の責任と考えている(33%)
このような状況の一つの対策になり得るのが、デジタル化技術の活用による品質管理プロセスの再定義です。従来、品質管理のトラッキングには、主に静的な文書や個別のアプリケーションを使用する社内の品質管理部門に依存していました。
しかし、企業は、拡大し続ける複雑なビジネス要件を管理するために、より堅牢な仕組みを確立する必要があります。製品の開発に関わる全ての部門、個人およびプロセス(サステナビリティ、規制要件、品質管理、コスト削減と効率性、障害の防止、規定フォーマットのレポーティング、得られた教訓とノウハウの展開などを含む)を包含しなければなりません。
システム観点でいえば、生産現場の製造実行システム(MES)、経営層のエンタープライズリソースプランニング(ERP)、カスタマリレーションシップマネジメント(CRM)、製品ライフサイクル管理(PLM)など他の製造管理システムと連携することで、全ての段階で品質基準を確実に順守し、製造/検査工程を効率的に合理化することを目的とします。
そしてこの目的を具体的に実現する上で貢献する手法が、フィードバックプロセスを考慮したクローズドループの生産(CLM:Closed-Loop Manufacturing)と品質管理(CLQ:Closed-Loop Quality)なのです(図2)。
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