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工場内プロジェクションマッピングがモノづくりを変える 山形カシオの実践事例スマートファクトリー(1/3 ページ)

カシオ計算機はプロジェクター技術を生かした新規事業として組込プロジェクション事業を展開し、工場向けでの用途提案を強化している。その実践の場として、同社のマザー工場である山形カシオで、モノづくりの改善にプロジェクターを活用し、徐々に成果を生み出しつつある。その内容を紹介する。

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 大規模イベントや展示会場などでプロジェクションマッピングが一般化している。プロジェクションマッピングは、Projection(映写)とMapping(貼り付ける)を組み合わせた言葉である通り、プロジェクターによる映像を活用し、ディスプレイモニターと異なり、空間に存在する物体に直接映像を表示できることが特徴だ。従来とは異なる映像体験を提供できることが魅力となっているが、こうしたプロジェクション技術を工場の中でも活用しようという動きが広がっている。

 カシオ計算機はプロジェクター技術を生かした新規事業として組込プロジェクション事業を展開しているが、その用途の1つとして工場向けの取り組みを強化している。カシオ計算機の組込プロジェクション事業の動向と、同社のマザー工場である山形カシオで取り組むプロジェクション技術の活用について紹介する。

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カシオ計算機のマザー工場である山形カシオ[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

ビジネスプロジェクター市場が縮小する中、他の用途へ展開

 カシオ計算機ではもともと、薄型でコンパクトながら高輝度を実現したビジネスプロジェクター製品群を展開してきた。レーザー光源とLED光源を組み合わせた独自の半導体光源技術を生かし、ビジネスプロジェクターとしては中規模となる教室や小会議室レベル(2000〜4000ルーメン)を得意領域とし、一定のシェアを獲得してきていた。しかし、ビジネスプロジェクター市場は、導入が一巡した他、ディスプレイモニターの低価格化で市場の縮小が進んでいたことに加え、コロナ禍により「一堂に集まり同じ映像を見る」というビジネススタイルそのものが成立しなくなってきたことで、急速な縮小が進んでいる。

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カシオ計算機の持つプロジェクション技術の位置付け[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

 そこで、カシオ計算機では2021年に事業を見直し、独自のプロジェクション技術を従来のビジネスプロジェクター製品以外の用途で展開できないかの検討を進めた。その中で生まれてきたのが「プロジェクションAR(拡張現実)」である。プロジェクションARはカシオ計算機の造語で、物体にプロジェクターから出力された映像を重ね合わせることで、現実世界にあるものとデジタル情報を融合した表示ができる拡張現実としての価値創出を目指す。

 そして、このプロジェクションARを展開し価値創出を目指すターゲット市場として「スマートホーム」「スマートビルディング」「スマートファクトリー」の3つを定め、これらの領域でプロジェクション技術をパートナーの製品やシステムに組み込めるように組み込みプロジェクションモジュールの展開を開始した。

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カシオ計算機が展開する組込専用プロジェクションモジュール[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

 「スマートファクトリー」領域では、工場での労働力不足が顕著となる中で、省人化に貢献していく方針だ。既に展示会などではOKIや東京エレクトロンデバイス、三菱電機などのパートナー企業との工場向けのソリューション例なども紹介している。例えば、OKIとの取り組みでは、OKIが展開するセル生産の作業を支援する屋台型のシステム「プロジェクションアセンブリーシステム(PAS)」のプロジェクター部分にカシオ計算機のプロジェクション技術を採用。作業指示書に合わせてピックアップする部品などをプロジェクターで明示し、実際に手で取る場所についても映像で指示することなどが可能だ。また、組み立て作業内容を手元で動画で映すこともできる。

 カシオ計算機 開発本部 新規事業統轄部 第二企画部 営業企画室 室長の中河敦氏は「製造ライン内でプロジェクターによって作業指示などの映像を表示し、人の作業を支援するような使い方が想定できる。フロアや壁などにガイド表示をするような使い方も可能だ。これらの用途で活用するためには、独自の光源技術で明るく小さくできる点や、ビジネス用途で鍛えられた高耐久であるカシオ計算機の強みが発揮できる」と語っている。

photophoto カシオ計算機が考えるプロジェクションAR実現のポイント(左)と組み込みプロジェクション事業の展開(右)[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機
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