6Gで採用される4つの新技術とは、サブTHz帯とNTNに加えAI活用が最大のテーマに:製造業IoT(2/2 ページ)
キーサイト・テクノロジーが、次世代移動体通信規格である「6G」の特徴や今後のロードマップについて説明。6Gでは4つの新技術が採用されることになるという。
「デジタルツイン」と「新たなネットワークアーキテクチャ」でもAIを活用
AIとMLの活用が波及するのが「デジタルツイン」だ。データを基に構築した仮想=サイバーの世界と、現実=フィジカルの世界をシームレスに連携することで、現実世界で起こり得ることを仮想世界上のシミュレーションで予測しあらかじめ対策を施しておくなど、デジタルツインには大きなメリットがある。5Gを超える通信が可能な6Gは、仮想世界の基になるデータを、現実世界からより高い粒度で取得できるようになるが、取得したデータをリアルタイムに仮想世界に反映し最適化する上でAIとMLが重要な役割を果たすことになる。ニコラス氏は「6Gを使って仮想世界を構築する一方で、仮想世界の中で6Gを使って現実世界に反映するというサイクルも生まれる」と述べる。
「新たなネットワークアーキテクチャ」では、既にStarlinkなどの事例があるNTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)の導入が進みそうだ。3GPPでは、高度150m以下の低空で運用するドローン(UAV)向けと、高度20kmなどの高高度で利用するHAPS(High Altitude Platform Station:高高度基盤ステーション)、高度600km以上の低軌道衛星を用いる衛星通信向けで分けて規格化を進めている。「地中や水中などでの通信についても検討が進んでいる」(ニコラス氏)という。
また、5Gで導入が始まった基地局システムの仮想化もさらに進化する。O-RANアライアンスの活動などにより、フロントホール、ミッドホール、バックホールを結ぶ各インタフェースがオープン化され、柔軟なシステム構成が可能になっている。中でも、RIC(Radio Intelligent Controller)はAIを組み込むことで、システムを構成する各ノードの運用がインテリジェント化を実現している。ニコラス氏は「使い方は分からないが、6GではRIC以外の各システム構成要素にもAIが組み込まれることになるのは確実だ」と語る。
6Gの開発と実装で日本の果たす役割に期待
1Gの時代から移動体通信規格の策定や導入の動きを見てきたニコラス氏は「6Gは既に目に見える形で動きが出ており、5Gよりも早く、これまでにない協力体制だ。特に各国政府の支援がしっかりしている。例えばインドなどは、5Gの導入がまだ終わっていないにもかかわらず、6Gについてはかなりアグレッシブだ」と説明する。
また、日本が6Gの規格化や実装などで果たす役割に対する期待についても言及した。「日本は移動体通信に関わる研究開発に積極的なだけでなく、島国の中でハイテク、農業、鉱山、漁業などのさまざまな産業が混在するという地理的条件からも、特に6Gで導入されるNTNテストケースとして重要になってくるだろう。当社は、グローバルで6Gに関わるさまざまな活動を支援しているが、日本発で光と無線の統合を目指すIOWN Global Forumは非常に優れた試みをしていると考えており、積極的に支援していきたい。どんなに大きな企業であっても6Gは単独で開発できるものではない。協力が必要だ」(ニコラス氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ローカル5Gの本格普及は2025年以降に、課題は「コスト」と「使いやすさ」
5G-SDCが「ローカル5G関連市場見通し調査レポート」について説明。ローカル5Gの本格的な普及期は2025年以降になる見込みで、コストや使いやすさなどを含めて中小企業や小規模案件にも適用できるようにするための取り組みが重要になると指摘した。 - 日本の5Gは韓国中国台湾よりも遅れている!? マッシブMIMOのサブ6基地局が鍵に
エリクソン・ジャパンが2022年11月に発表した「エリクソン・モビリティレポート」について説明。日本の5Gネットワークの基地局密度やスループットが、韓国や台湾、中国など北東アジアの近隣諸国と比べて低いレベルにとどまっていることを指摘した。 - 現実解を模索する導入3年目のローカル5G、Wi-Fi 6Eはダークホースになり得るか
さまざまな事業主体が5Gを自営網として利用できるローカル5Gの国内導入が始まって2022年は3年目になる。4.6G〜4.9GHzの周波数帯を用いるサブ6とSA(Stand Alone)構成という組み合わせが現実解として主流になる中、導入コスト削減に向けた取り組みも進んでいる。一方、6GHz帯を用いるWi-Fi 6Eを国内で利用するための検討作業も進んでいる。 - レゾナックの最注力は半導体の後工程材料、6G向け半導体の新材料も開発
レゾナック・ホールディングスは「レゾナック株式会社」を発足した。レゾナックでは、昭和電工と日立化成の技術を組み合わせて、世界トップクラスの機能性化学メーカーになることを目指している。 - キヤノンがスマホ搭載可能な小型テラヘルツデバイスを開発、世界最高出力も達成
キヤノンは11.8mWの高出力と高い指向性を兼ね備える発振周波数450GHz(0.45THz)の小型テラヘルツデバイスを開発。これらの出力と指向性は、450GHz出力のテラヘルツデバイスとして「世界最高」だという。 - グラフェンの光検出器としての有望性を実証、ゼロバイアス動作で世界最速を実現
日本電信電話(NTT)はNIMS(物質・材料研究機構)と共同で、炭素原子だけで構成されるシート状物質のグラフェンを用いた光検出器で世界最速のゼロバイアス動作を実現するとともに、グラフェンにおける光-電気変換プロセスを解明したと発表した。