ラズパイ活用で“PLCを再発明”、新市場開拓で5年後に売上高10億円規模目指す:FAニュース(2/2 ページ)
リンクスは2023年1月17日、東京都内およびオンラインで記者会見を開き、産業用コントローラー「TRITON」を同日より販売すると発表した。価格は標準モデルで6万8000円(税抜き)、初年度に500台、5年後には1万台以上の販売を目指す。
パッケージ化で3つの離脱の谷を回避、スムーズな組み込み開発をサポート
リンクスは国内総代理店として2012年からCODESYSのPLCソフトウェアを販売してきた。リンクスでは今回、3カ月間で150社以上にCODESYSを利用する上での課題をヒアリングし、CODESYSの導入に至らなかった理由を分析した。すると、ハード選定、OS導入、セットアップという、“3つの離脱の谷”があることが判明したという。
リンクス ソリューション営業統括責任者 ソリューションプロダクツ推進担当 シニアアーキテクトの村松啓且氏は「1つ目のハード選定では性能とコストを見極めることが難しく、67%が諦めている。2つ目のOS導入では、OSとしてはLinuxが使われることが多いが、ノウハウがなくて使いこなせず、パフォーマンスを発揮するのが難しく24%が諦めている。そして、うまくハードを選定してOSを入れることができても、トラブルが発生した時に問題がハードにあるのか、ソフトにあるのか切り分けできずに振り出しに戻ってしまう。結局、製品の組み込み開発に行きつけるのは数%のユーザーだった」と明かす。
そのため、TORITONでは、CODESYSとRaspberry Pi Compute Module 4を1つのパッケージにすることでユーザーのハード選定の負担をなくし、OSはリンクスがTRITON向けにLinuxを特別にチューニングした。また、TRITON発売を機に、実践的なユーザーマニュアルやレファレンスデザインガイド、ウェブサポートを再編集して提供することで、ユーザーのスムーズな製品組み込み開発につなげる。
村松氏は「これを可能にしたのは、われわれが約10年にわたりCODESYSを販売し、CODESYSを国内で最も熟知している点と、ソリューション事業を通して培った組み込みLinuxへの深い知識と経験がある点が今回の開発に生きている」と話す。
TRITONの電源は24Vで、安全規格はCE認証を取得している。イーサネットやUSBなどの通信インタフェース、HDMIなどのディスプレイインタフェースに対応している。搭載されるCODESYSは主要なフィールドバスはサポートしている他、ビジュアライゼーションの機能であるCODESYS Web Visuも含まれている。記者会見の会場ではEtherCATでモーターを制御したり、HDMIでモニターに接続してユーザーインタフェースを表示するデモンストレーションなどが行われた。TRITONを既に導入している企業が十数社あるが、商談時には「こういう製品を待っていた」「すぐにテストしたい」などの声が聞かれたという。
TRITONは2023年1月25〜27日まで東京ビッグサイトで開催される「スマート工場EXPO」に出展する。
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