振動と音に関する基礎量 その2:CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(3)(3/4 ページ)
連載「CAEと計測技術を使った振動・騒音対策」では、“解析専任者に連絡する前に、設計者がやるべきこと”を主眼に、CAEと計測技術を用いた機械の振動対策と騒音対策の考え方や、その手順について詳しく解説する。連載第3回では、騒音計を使う際にいつも設定している「A特性」と「音響インテンシティ」について取り上げる。
音響インテンシティから分かるもの
音響インテンシティの文献で最初に書かれているものは、音源の音響パワーレベルの測定です。音源が何ワットの音を出しているかの測定で、音響インテンシティなら無響室に音源を持ち込まなくてもよいのです。
図8に音源の音響パワーレベルの測定方法を示します。音源を囲む直方体を想定して面要素に分割します。そして、面要素ごとに音響インテンシティを測定します。音響インテンシティは単位面積当たりを通過する音のエネルギーだったので次式で音源が出している音のエネルギーが求まります。
無響室に音源を持ち込む必要がない理由を図9で説明します。音源から出た音は面要素AでI1の音響インテンシティとして測定されます。そして、この音は壁に反射して面要素BでI2として測定されます。音響インテンシティはベクトル量だったのでI2マイナス値となります。さらに、この音は面要素CでもI2として測定されます。このときのI2はプラス値です。この結果、面要素Bの音響インテンシティと面要素Cの音響インテンシティが相殺されるので、壁からの反射音は勘定に入らないことになります。同様の理由で測定のための面要素は床に設定する必要はありません。ただし、床はコンクリート面のように音がよく反射する材質である必要があります。
日本国内でこのような大掛かりな測定をやっている人はほとんどいないのではないでしょうか。音響インテンシティの“第2の用途”を説明します。
図10はスピーカーから1000[Hz]の音を出して音響インテンシティを測定した結果です。図を見れば分かるように、ベクトルをさかのぼれば音源の位置が特定できます。測定値を「Excel」に取り込んでちょっとしたマクロブログラムを作って音源の座標を計算したものを図10の赤丸で示します。これは非常に分かりやすい例ですが、このようにして音源を特定することが可能です。
YouTubeに音響インテンシティ測定例がありますので紹介しておきます(参考文献[2])。
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