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正極と負極を分けるだけじゃない、「セパレータ」は電池の安全性も左右する今こそ知りたい電池のあれこれ(18)(1/3 ページ)

これまでリチウムイオン電池に使われる代表的な材料として、電池の容量を担う活物質(正極、負極)や、リチウムイオンの移動しやすさを左右する電解質について解説をしてきました。しかし、リチウムイオン電池に必要な材料はそれだけではありません。以前、熱暴走の解説をした際に少し触れた「セパレータ」もリチウムイオン電池を構成する重要な材料の1つですので、今回解説していきたいと思います。

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 本連載「今こそ知りたい電池のあれこれ」も、2023年で3年目を迎えました。昨年(2022年)においても「MONOistオートモーティブ年間ランキング2022」に本連載から3つランクインするなど、大変多くの皆さまにお読みいただき、心より感謝申し上げます。本年も引き続き、何かと話題になりがちな「電池のあれこれ」について発信していければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 これまでリチウムイオン電池に使われる代表的な材料として、電池の容量を担う活物質(正極、負極)や、リチウムイオンの移動しやすさを左右する電解質について解説をしてきました。

 しかし、リチウムイオン電池に必要な材料はそれだけではありません。以前、熱暴走の解説をした際に少し触れた「セパレータ」もリチウムイオン電池を構成する重要な材料の1つですので、今回解説していきたいと思います。

セパレータが持つ電気絶縁性と機械的強度

 セパレータは電池の内部で正極と負極を分離するために用いられる樹脂製の微多孔膜です。

 現在実用化されているセパレータのほとんどはポリエチレンやポリプロピレン、いわゆるポリオレフィン系の樹脂でできており、充放電に伴うリチウムイオンの移動を妨げないイオン透過性を有しつつ、正極と負極の接触による短絡発生を防ぐための電気絶縁性や機械的強度を兼ね備えています。

ポリエチレンやポリプロピレンの一般的な構造式(左)。セパレータフィルムの例(右)[クリックで拡大] 出所:東レ

 樹脂でできた絶縁性の素材ということもあり、セパレータそのもの自体は電気化学的に不活性、つまり電池容量を担うような反応には寄与していません。

 しかし、セパレータの存在はリチウムイオン電池の性能、特に安全性において非常に重要な役割を果たしています。電池が激しい燃焼を伴うような熱暴走に至るかどうかを左右するポイントの1つは、セパレータの有する機能性にあるともいえます。


異常発熱や熱暴走に至る要因[クリックで拡大]

 以前にも解説した通り、電池の内部で正極(プラス)と負極(マイナス)が直接つながる「内部短絡」は異常発熱や熱暴走に至るきっかけの1つです。電池の内部構造を破壊するような外部衝撃、コンタミ(製造時異物混入)や金属析出によるセパレータの損傷などによって内部短絡が生じる可能性があります。

 また、電池の製造工程、特に内部構造が巻回式の円筒型である場合、セパレータは比較的強い力で引っ張られながら巻き上げられていくため、伸び方向の変化に対する強度が不十分であると製造不良となる恐れもあります。そのためセパレータにはそういった種々の要因を考慮した高い機械的強度が要求されます

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