自動車業界のWebマーケティング戦略 新規顧客獲得には何が必要か:間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(11)(4/4 ページ)
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第11回のテーマは自動車業界向けのWebマーケティング戦略の解説だ。
新市場開拓のためのWebマーケティングとは
異業種の企業に自社を認知させ、相談を呼び込むために必要な手法がWebマーケティングだ。企業の情報収集の方法はリアルからWebにシフトしている。Webを活用し、自社の技術をさまざまな角度で訴求することで、幅広く自社を認知させ、興味を持ったユーザーから直接の相談を呼び込むことができる。
Webマーケティング遂行における3つのSTEP
Webマーケティングの大まかな流れを紹介する。
(1)新市場開拓に有望な検索キーワード候補の多角的な収集
Webマーケティングが一般的になる中、競合するWebサイトは増加傾向にあり、一般的なキーワードだけでの対策では成果を上げるのが難しくなっている。新市場開拓を目指す場合、多くの人が思い付かないニッチなキーワードの収集が鍵となる。
(2)キーワード候補の評価と優先順位付けによる対策キーワードの選定
多数のキーワード候補をリストアップできたとしても、それらのキーワードが実際に検索されているか、また競合が多いかどうかの確認が重要だ。検索需要や競合性を基に、効果的なキーワードを選定することが求められる。
(3)対策キーワードに基づいた検索上位表示を目指すWebコンテンツの充実
適切なキーワードを選定しただけでは、Webサイトへのアクセス増加は期待できない。検索上位表示を目指すためには、単に自社の技術や製品をPRするのではなく、ユーザーの検索意図に応じた質の高いWebコンテンツの作成が不可欠だ。
Webマーケティングを成功させるための3つのポイント
Webマーケティングを成功させるためのポイントを紹介する。
新市場開拓につながるキーワードを徹底的に洗い出す
Webマーケティングを活用して新市場開拓を進めるには、多岐にわたる分野の技術者に自社の技術を知ってもらうことが必要だ。技術者が発注先を探す際にWebで検索するキーワードは、その人の専門背景や現在の状況によって大きく異なる。従って、さまざまな視点からの検索にも対応できるWebサイトを構築できれば、新たな用途開発のチャンスを増やせる。
検索上位対策の難易度が高いキーワードばかりを採用しない
製造業界においても、Webマーケティングを導入する企業が増加している。その結果、多くの企業がターゲットとする(誰でも思い付く)ようなキーワードは競争が激化し、検索上位表示が難しくなっている。
しかし一方で、検索需要はあるものの、競合企業がまだ取り組んでいないニッチなキーワードも多数存在する。これらのニッチキーワードを対策キーワードとして採用し、検索上位表示させることができれば、短期間での成果も期待できる。
検索上位表示を実現するための良質なWebコンテンツを制作する
適切なキーワードを選定したとしても、ユーザーが検索した際に上位に表示されなければ、Webサイトへの訪問者は増えない。ユーザーの検索意図を正確に捉えた質の高いWebコンテンツを作成することで、検索結果で上位に表示させ、訪問者からの問い合わせを増やすことができる。
今回の記事で何よりも伝えたいことは、市場調査や用途定義、ターゲットの特定に時間と労力をかけるよりも、広く自社の技術を認知させ技術を必要とする相手から声をかけてもらうほうが可能性が広がるということだ。もちろん明確なターゲットの定義、提供価値の検討も戦略としては大切だが、ユーザーからの相談を呼び込む中で見つけるほうが、より成功確率の高い戦略が見いだせるはずだ。
長年行ってきた自動車業界からの受注以外に活路を見いだすためには、まずは案件の獲得、そしてそれに対応できる柔軟な受注体制の構築も同時に考える必要がある。課題は多いが、まずは異業種を開拓する突破口として参考にしていただけたら幸いだ。
⇒記事のご感想はこちらから
⇒本連載の目次はこちら
⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧
筆者紹介
小林正道
テクノポート株式会社 取締役
製造業のWebマーケティング支援を15年以上行っている。製造業への訪問実績は2,000社を超える。幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規開拓営業の支援を行う。
『マーケティングスキル×Webスキル(SEO中心)×製造業に関する深い知識』
この3つのスキルを組み合わせることで独自の専門領域を作り、卓越した力を発揮する。
日本工業大学技術経営学修士(MOT)2023/3卒業。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ⇒連載「間違いだらけの製造業デジタルマーケティング」のバックナンバー
- 製造業でも急速に広まるデジタルマーケティング、得られる5つの価値とは
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第1回のテーマは「製造業がデジタルマーケティングで得られる価値」だ。 - 生き残る鍵は「個客理解」、サントリーが考えるwithコロナ時代のマーケティング
withコロナ時代をメーカーが生き抜くために、「個客理解」の重要性がこれまで以上に増しているとサントリー酒類は指摘する。AIなどを用いたDXを推進することで、顧客の価値観の変遷に合わせて柔軟にマーケティング戦略を構築していく必要がある。 - 社長はプロレーサー! ツーリングでマーケティング
機械切削の腕前も抜群なプロレーサー社長のマイクロモノづくりを紹介する。ツーリングやバイク教室もマーケティング活動の一環だ。 - これだけは知っておきたい! 「マーケティングって何?」(前編)
今回は、身近な存在のようだけど、いまひとつ理解しづらい「マーケティング」についての解説。T字型人材を目指すエンジニアなら、ちゃんと説明できるようになっておきたい。 - これだけは知っておきたい! 「マーケティングって何?」(後編)
マーケティングの基礎・後編では、「マーケティングミックス」について解説する。標的とした市場セグメントに、どのようにアプローチすればいいのだろうか。