メカ設計者でも知っておきたい! CAMを使った加工プログラムの作成方法:デジタルエンジニアの重要性と育成のコツ(6)(3/3 ページ)
現代のモノづくりにおいて、3D CADやCAE、CAM、3Dプリンタや3Dスキャナーといったデジタル技術の活用は欠かせない。だが、これらを単に使いこなしているだけではデジタル技術を活用した“真の価値”は発揮できない。必要なのは、デジタル技術を活用し、QCDの向上を図り、安全で魅力ある製品を創り出せる「デジタルエンジニア」の存在だ。連載第6回では「CAMを使った加工プログラムの作成方法」について解説する。
CAM作業に入る前に
加工とは、設計に基づく人工物を忠実に作り上げることです。切削加工といってもすぐに工作機械での加工に入るわけではなく、設計情報で指示された部品を機械加工するための製造設備、また材料、工具などの調達/手配可否と、事前に検証しなければならない業務があります。
製造可能と判断されたら、次はいかに加工精度を維持し、機械の段取りを効率良くできるかなど、機械加工工程を決める“工程設計”が行われます。
加工工程とその順番、加工機械を選定して工程が確定したら、機械加工の作業手順などを決め、製造ロット数、加工スケジュールの指示など、加工に必要な作業指示を決定する“作業設計”が行われます。
以上の流れに基づいて、NC工作機械を用いる場合にはCAMでツールパスを作成し、加工シミュレーション、ポスト処理を経て、工作機械のNCデータが準備されます。NCデータの準備を終えたら、いよいよ実加工へと移行し、加工すべき材料と加工に使用する機械などの作業指示書の指示に従い作業を行っていきます。そして、機械加工された部品は、検査工程に移行していきます。
CAMには現場ノウハウが必要
加工の仕上がりは、工具の太さやツールパスなど、切削条件に大きく影響されます。必要な品質、精度の仕上がりにするためには、切削条件や段取りなどの工夫、ノウハウが不可欠です。加工時間を短縮するためには、段取りや設定のパラメーターをいろいろと変更するなどの必要があります。
「CAMやNC工作機械があれば、熟練技能は必要ない」ということはなく、「NC工作機械は、人間が指示入力をしなければ何もできません」。技能は知恵を働かせ、創意工夫をすれば向上しますが、CAM、NC工作機械は指示されたことしかできません。加工者は良い製品を作り上げようと日々、努力しているわけです。
今回は、メカ設計者の方々にも加工作業のことを知ってもらいたくCAMについて取り上げてみました。少しでも今後の業務のお役に立てれば幸いです。 (次回へ続く)
筆者プロフィール
小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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