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非線形の問題は一体どのように解くの? 解析ソフトはどんな計算をしているの?いまさら聞けない 非線形構造解析入門(6)(2/2 ページ)

多くの3D CADではオプションとしてCAE機能が用意されているが、ほとんどの方が「線形解析」での利用にとどまっており、「非線形解析」にまで踏み出せていない現状がある。本連載では、構造解析でも特に非線形解析にフォーカスし、初心者向けに分かりやすくその特長や活用メリットなどを紹介する。最終回となる連載第6回では、Newton-Raphson法(ニュートン法)を取り上げつつ、非線形解析ソフトがどのように解析の計算を進めているのかについて解説する。

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非線形解析ソフトでは、どのような処理が行われている?

 とはいっても、実際に解析に寄せて話をしないと分かりにくいかと思います。そこで、具体的に非線形解析ソフトの内部でどのような処理が行われているのかについて簡単に説明します。

 それでは、式の観点から線形解析と比較してみましょう。図3を使って説明していきます。

非線形解析とNewton-Raphson法
図3 非線形解析とNewton-Raphson法[クリックで拡大]

 まず、計算途中のある状態から、さらに荷重が付加されて計算を進めることを考えます。通常、これは最後に計算された収束荷重になります。ここからさらにある目標荷重Fを載荷します。

 1回目の計算では、図3の一番左側の状態になります。最初に、既知の状態における接線剛性マトリクスを構築し、これに目標荷重(荷重増分)が載荷されます。しかし、この接線剛性マトリクスを使って計算すると、実際の材料の応答から外れた値が求められたというのが、この後に続く繰り返し計算の1回目ということになります。このときの不釣り合い力が残差荷重になります。目標荷重と接線剛性マトリクスから、Δu1が求まります。

 ここから、この増分荷重を計算するための次の繰り返し計算のループに入ります。解を修正して、残差荷重Δf2を求め、さらに更新された接線剛性マトリクスを使って、Δu2が求まります。ここで残差荷重が十分に小さければ、繰り返し計算を打ち切りますが、まだ大きいと判断されれば、繰り返し計算を続けます。計算を繰り返せば繰り返すほど、本来の解に近づいていくと考えられます。

 とはいえ、永久に計算を続けるというのはもちろん現実的ではありません。そのため、“実用上問題のない程度の解が求まればよい”という取り扱いを解析ソフトでは行います。「解が収束した」というのは、要するに「実用十分な精度の解が求められた」ことを意味します。

最終的な目標荷重をどのくらいの増分で計算するのかの指定について

 解析ソフトのユーザーインタフェース(UI)では、最終的な目標荷重をどのくらいの増分で計算するのかを指定します。その増分も、ユーザーが指定した一定の増分で計算する場合もありますし、ソフトによっては、収束状態に応じて増分幅を広げたり、縮めたりして設定することも可能です。

 比較的、非線形性が緩やかな計算であれば、固定の刻みでも、可変の刻みでも問題ありませんが、計算途中で座屈などを起こして急激に剛性が変わってしまい、非常に不安定な挙動になる際は、固定刻みではうまく収束できず、最終的な荷重にたどり着く前に「収束せず」という“エラー”を起こし、解析を終了してしまうことも珍しくありません。

 可変的な増分であれば、強い非線形性を持つような場合でも、解析ソフトの方で増分を縮めてくれるため(とはいっても、ものには限度がありますが)、エラーを起こさずに収束する可能性が高くなります。

(左)SOLIDOWORKS Simulationのステップ設定の画面/(右)MSC MarcのプリプロセッサMentatのステップ設定画面
図4 (左)SOLIDOWORKS Simulationのステップ設定の画面/(右)MSC MarcのプリプロセッサMentatのステップ設定画面[クリックで拡大]

 また、強い非線形性が予測されるような計算では、固定の増分や可変の増分における“最初の増分は小さくすること”をオススメします。増分が大き過ぎると、図4からイメージできると思いますが、かなりの繰り返し計算を行っても残差荷重を小さくできず、計算が終わってしまう場合があります。また、仮に収束できても、不必要な繰り返し計算によって、計算時間が伸びてしまうことも考えられます。

 逆に、増分値を非常に小さくすると、増分当たりの繰り返し計算数は抑えられますが、増分数が非常にたくさんあため、やはり計算に時間がかかります。従って、“よいあんばいの増分”を決めることが、効率的な非線形解析につながります。

連載の最後に

 以上、ここまでの内容で、本連載でお伝えしたかった非線形構造解析にまつわる基本的な解説は終了となります。

 冒頭でお伝えしたように、解析、特に非線形解析はソフトの設定ができたからといって解析がうまくいくとは限りませんし、ソフトの設定ができる=(イコール)解析ができるというわけでもありません。自分が行っていることの妥当性を担保する意味でも、本連載で解説してきた内容を踏まえた解析を心掛けてください。

 ただ、そうはいっても「簡単なものでもよいので、実解析を見てみないとよく分からない……」という声があるのも事実でしょう。そのあたりは、題材を準備できた際に、本連載の「続編」という形であらためて紹介できたらと思います。長期間、本連載にお付き合いいただきありがとうございました。 (連載完)

⇒ 連載バックナンバーはこちら

Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。mfabrica合同会社 社長。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わった他、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開。2016年に新たにmfabrica合同会社を設立し、3D CADやCAE、3Dプリンタ関連事業、製品開発、新規事業支援のサービスを積極的に推進している。著書に著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。


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