人が手本を示してロボットに教示、微妙な力加減や複雑な動きを自動化:産業用ロボット
安川電機は、人が手本を示してロボットに動きを教える、実演教示パッケージ「MOTOMAN-Craft」を発売した。人の動きを直接ロボットに教示して、熟練を要する微妙な力加減や複雑な動きの作業工程を容易にロボット化できる。
安川電機は2022年11月15日、人が手本を示してロボットに動きを教える、実演教示パッケージ「MOTOMAN-Craft(モートマンクラフト)」を発売した。人の動きを直接ロボットに教示して、熟練を要する微妙な力加減や複雑な動きの作業工程を容易にロボット化できる。価格はオープン。
ロボットに動きを教える場合、通常はプログラミングペンダントを使用し、動作命令や数値で位置情報を入力してプログラムを作成する。滑らかな自由曲線動作のプログラムは多くの動作命令や位置情報を必要とする他、動作命令間をスムーズにつなぐ処置のための時間も必要となる。
MOTOMAN-Craftは、人の動きをセンシングする専用教示デバイスを操作することで、位置情報や力覚情報を取り込んで数値化し、プログラムを自動生成する。例えば研磨工程で求められる、ワークの曲面形状に合わせた3次元的な軌道や力加減を、短時間で簡単にプログラム化できる。
また、専用教示デバイスで自動生成されたプログラムの位置と、実際にロボットの先端に把持されたワーク位置には、微妙なずれが発生する。そのため、ロボットが受ける力が、人が教示した時と変わってくる場合がある。MOTOMAN-Craftでは、ロボットが作業をしながら学習し、教示時の力覚データとロボットが実際に受ける力の誤差が小さくなるように自動で修正し、力加減を調整する。
位置データについても、動きの変化が大きい場所では細かく、変化の小さいところでは大まかに設定して、生成プログラムを簡素化してデータ量を削減。プログラムを自動で最適化する。
アプローチ動作最短化機能も搭載しており、人が専用教示デバイスで教示する際に発生する動作のうち、生産開始後に不要になる動作をプログラムから削除する。これにより、最短の経路でスタート地点から最終的な作業開始位置、姿勢まで移動させることができる。
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