超小型衛星の開発を単一プラットフォームで、ジェネレーティブデザインや金属3Dプリンタも活用:デジタルモノづくり(5/5 ページ)
オートデスクは、同社ソリューションやソディックの金属3Dプリンタを活用したモノづくりの先進事例として、日本大学理工学部 航空宇宙工学科が研究開発を進めている超小型衛星「CubeSat」および小型衛星トレーニングキット「HEPTA-Sat」の取り組みを紹介するプレスツアーを開催した。
誰もが宇宙空間にアクセスできる世の中を目指して
山崎氏は、超小型衛星の研究開発を進める一方で、衛星教育、宇宙技術の人材育成にも貢献したいと考え、HEPTA-Satという小型衛星トレーニングキットを開発。HEPTAとは“Hands-on Education Program for Technical Advancement”の略称で、1UのCubeSatのキットと教科書を用いた実践型のハンズオンによるトレーニングプログラムを用意している。
通常であれば数年かかるような衛星システムの開発のエッセンスを抽出し、1日〜2週間でその基礎を学ぶことができるもので、トレーニングプログラムとして、運用/機能/物理要素とその関係を教科書とキットで理解する「CubeSat Assembly,Integration&Test」(Step1)、問題を設定して新しい衛星の設計開発を体験する「Problem&Project Based Learning」(Step2)、システムのモデル図を用いた開発体験(モデルベース開発)が行える「Visualization of design and development」(Step3)の3つのステップを設けている。トレーニングプログラムで用いられる教科書の中には、CubeSatの設計開発を行うためのプラットフォームとして、Fusion 360の活用の仕方などについても触れられているという。
「従来、衛星システムの開発を学ぶには、設備のある大学などでないとその経験を積むことができなかったが、このトレーニングプログラムでは1日〜2週間という短期間で、誰もが衛星システムの開発を体験できるよう、本物のモノづくりで発生するようなイベントなども織り交ぜてアレンジを施している」(山崎氏)。ワークショップに関しては、研究室の学生らが先生役として参加者の指導やサポートに当たったり、教材のブラッシュアップを行ったりしているという。2012年にワークショップを開始して以来、53カ国の学生らが参加しており、現在では日本大学理工学部だけでなく、他の大学(東京工業大学や台湾の大学など)の実際の授業にも採用されている。
さらに今後の挑戦として、山崎氏はCubeSat開発だけでなく「全ての衛星システムの設計開発プロセスをワンプラットフォームで管理し、Fusion Teamのデジタルコラボレーション機能によって、設計情報の共有や開発に関するシームレスなコミュニケーションを実現したい」と述べる。また、教育から実際のCubeSatプロジェクトへの発展も視野に入れており、「世界中の大学とコラボレーションして、国際的な大学衛星のコンステレーションを実現することで、例えばわれわれが取り組んでいる地震や津波などの事象を宇宙から観測して新しい知見が得られるような世界ができたらと考えている」(山崎氏)と展望を語る。
次世代を担う学生の支援に力を入れているオートデスク
今回のプレスツアーで紹介した日本大学理工学部 航空宇宙工学科、ソディック、オートデスクの3者による産学連携の先進事例を踏まえ、オートデスク エデュケーションエクスペリエンス マネージャーの渡辺朋代氏は、あらためて製造業の未来を担う人材育成の重要性を説く。そして、今回のような取り組みをさらに広げていくために、オートデスク 日本法人として、教育分野に対して、トレーニング/エンジニア教育の実施、オートデスク製品の無償提供(教育目的に限る)、教育向け学習教材の提供や資格制度などの展開をさらに強化し、「次世代を担う学生を支援する活動に力を入れていく」(渡辺氏)という。
また、教育分野に対する取り組み強化の中で、さらなる普及を図りたいのがFusion 360だ。現在、オートデスク 日本法人では、Fusion 360を学校の授業などでより活用できるように、教職員向け講習会/ワークショップを無償で実施している。その意義について、渡辺氏は「変化に合わせて、新しい挑戦をすることは非常に大変なことだが、講習会などを通じて、新しい教育について考える機会を提供できればと考えている」と述べる。
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