ソニーグループは円安効果で売上高と営業利益が過去最高、イメージセンサー好調:製造マネジメントニュース
ソニーグループは2022年11月1日、2023年3月期(2022年度)第2四半期(7〜9月)の業績を発表した。ゲーム関連事業がやや苦戦したものの、円安効果などでイメージセンサー関連事業や音楽事業などが好調で、第2四半期単独および上半期(4〜10月)として、売上高と営業利益で過去最高を更新した。
ソニーグループは2022年11月1日、2023年3月期(2022年度)第2四半期(7〜9月)の業績を発表した。ゲーム関連事業がやや苦戦したものの、円安効果などでイメージセンサー関連事業や音楽事業などが好調で、第2四半期単独および上半期(4〜10月)として、売上高と営業利益で過去最高を更新した。
売上高と営業利益で過去最高を達成
ソニーグループの2022年度第2四半期連結業績は、売上高が前年同期比16%増の2兆7519億円、営業利益が同8%増の3440億円、税引き前利益が同22%増の3458億円、純利益が同24%増の2640億円という結果となった。また、上半期としては、売上高が同9%増の5兆634億円、営業利益が同9%増の6510億円、税引き前利益が同13%増の6371億円、純利益が同13%増の4822億円という好結果となっている。
ソニーグループ 代表執行役副社長 兼 CFOの十時裕樹氏は「反省点もあるが全体としては事業環境の変化が大きい中で迅速に対応ができたと捉えている。音楽事業やイメージセンサー事業では、円安の効果もあったが、これまでの投資の成果が着実に出ている。多様なポートフォリオを抱える中でコスト構造的にそれぞれがバランスを取る形となり、変化の中でのレジリエンスを高めることができている」と上半期の手応えについて述べている。
円安効果が主要分野で大きく影響
全体を大きく牽引(けんいん)したのが、スマートフォン端末向けイメージセンサーを中心とした、イメージング&センシング・ソリューション分野(I&SS分野)である。同分野は売上高が前年同期比43%増の3984億円と大幅増となり、営業利益も同49%増の740億円となっている。大きかったのが為替の影響だ。イメージセンサーは国内で製造しているため、円安になると売上高、営業利益ともにプラス効果を生む。加えて、モバイル向けの製品ミックスが改善したことから大きく収益性を高めた。十時氏は「中国のスマートフォン端末市場の改善は進まなかったがおおむね想定内に収まった。ハイエンドスマートフォン端末におけるイメージセンサーの大判化、高画質化、高性能化の流れも予想通りで、これらの動きに合わせて製品ミックスが改善した」と手応えについて語っている。
家電製品を中心としたエンタテインメント・テクノロジー&サービス分野(ET&S分野)も改善が進んだ。売上高は同16%増の6770億円、営業利益は7%増の778億円となっている。第1四半期は、コロナ禍による上海ロックダウンの影響を強く受けたが、第2四半期はデジタルカメラを中心にいち早くサプライチェーンの混乱から脱し、収益性を回復した。また、円安の効果も大きかったという。ただ、今後の需要動向については慎重に見ているという。「テレビはパネル供給過剰による値下げ圧力が強まっており、欧州の需要低迷などもあり、環境は厳しい」(十時氏)。そのため、オペレーション強化策として、生産の自動化、製販オペレーションのDX(デジタルトランスフォーメーション)化、調達や物流における連携の強化、事業環境への適応強化、などの施策を進めるとしている。
一方、利益は出ているもののやや苦戦したのが、ゲーム&ネットワークサービス分野(G&NS分野)である。為替の影響で売上高は同12%増の7207億円となったものの、営業利益は49%減の421億円となった。ゲームソフトウェアの開発費増加やサードパーティーによるソフトウェアの販売減がマイナス影響となった。ただ「半導体不足などで生産数が伸ばせなかった家庭用ゲーム機『PlayStation5(PS5)』の、部材調達問題がほぼ解消し、増産が行える状態になってきた」(十時氏)とし、第2四半期は650万台の生産を行ったという。これにより、年間販売目標1800万台もさらに上積みできる見込みになったという。「導入4年目となる2023年度にPS4の累計普及台数を超える計画だが、その通りに進めていく」と十時氏は述べている。
円安で生産拠点の見直しは行わず
全体的に見て、円安の効果が強く出た連結業績となったが、十時氏は「現在の為替感応度は、対米ドルで1円の円安に対し営業損益で10億円のプラス、対ユーロで1円の円安に対し70億円のプラスになる。全体的にはポジティブ効果がある」と述べている。ただ、こうした円安の動きを受けた生産拠点の見直しについては慎重な姿勢を示す。「生産拠点を決めるのは為替ではない。地政学的リスクやサプライチェーンの最適性などから判断する。ただ、変化に対して柔軟に動かせるというのは重要になるために、製造の自動化やDXを進める計画だ。製造の標準化を行い、どこでも作れる体制を作る。そういう方向性を積極的に進めていく」と十時氏は考えを述べている。
2022年度通期の連結業績見通しについては、第2四半期までの好業績を受けて、上方修正した。売上高は前回予想比1000億円増の11兆6000億円、営業利益は500億円増の1兆1600億円、税引き前利益は同500億円増の1兆1200億円、純利益は同400億円増の8400億円としている。
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