国内外の大手製造業がいま、顧客の「成功体験づくり」を重視するワケ:製造業のための「カスタマーサクセス」入門(1)(2/3 ページ)
顧客の成功体験づくり、すなわち「カスタマーサクセス」の重要性に国内外の製造業から注目が集まっています。本連載ではこの概念がなぜ注目されているのか、どのような取り組みを進めるべきなのかを解説していきます。第1回は国内外製造業のカスタマーサクセスの取り組み事例と狙いを紹介していきます。
国内製造業でもカスタマーサクセスが始まっている
はじめに、花王の事例を見てみましょう。花王は、「ハイジーン&リビングケア」「ヘルス&ビューティケア」「ライフケア」「化粧品」の4つの事業分野で、コンシューマプロダクツ事業をグローバル展開する、創業100年超の大手消費財化学メーカーです。
花王は2021年にカスタマーサクセス部を新設しています。同社ではDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の取り組みを推進していくためにDX戦略推進センターを設立しています。カスタマーサクセス部はその傘下の組織という位置付けです。
カスタマーサクセス部は「使って良かった」という顧客の成功体験づくりを推進することをミッションとしています。また先に示したシーメンスやエマソンと同様に、花王の製品ユーザー参加型のコミュニティーサイトを開設しています、生活に役立つ知恵や製品のおすすめの使い方などを紹介し、ユーザーに継続的利用価値を訴求しています。
サブスク型サービス提供企業でなくとも、花王のように、カスタマーサクセスに取り組む流れが国内でも起きていることが分かります。
2021年に実施されたあるカスタマーサクセス実態調査(対象者:全国の20歳から65歳の有職者2万1526人)によると、カスタマーサクセスに取り組んでいる企業の半数以上は、サブスクリプション型商材を扱っています。しかし、一方で、サブスク型商材を扱っていないにもかかわらず、カスタマーサクセスに取り組む企業も約2割います。
直近1年でのカスタマーサクセスへの意識変化をみると、サブスク型商材を扱っている回答者、扱っていない回答者のいずれにおいても、カスタマーサクセスへの必要性を感じている割合が約8割でした。さらに直近1年での新規顧客獲得数、新規売上、継続売上のいずれの項目においても、カスタマーサクセスに取り組んでいる企業の約4割が「増加した」と回答しており、具体的な業績成果にも影響が現れているようです。一方で、カスタマーサクセスに取り組んでいないと回答した企業の内、いずれの項目でも「増加した」とする企業の割合は2割にも満たないのです。
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