【DXで勝ち抜く具体例・その2】非効率を解消するビジネス:DXによる製造業の進化(5)(2/3 ページ)
国内企業に強く求められているDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、製造業がどのような進化を遂げられるのかを解説する本連載。第5回は、第2回で取り上げたDXで勝ち抜く4つの方向性のうち「非効率を解消するビジネス」の具体例として、CADDi、Rapyuta Robotics、CropIn、b8taの取り組みを紹介する。
Rapyuta Robotics――人とロボットの協働により“物流センターの作業員を減らす”
Rapyuta Roboticsは、2014年にチューリッヒ工科大学からのスピンオフで設立された日本のスタートアップです。AIで複数のロボットを群制御する技術を核に、物流センターにおけるピッキングの自動化を支援しています。
自動倉庫やGTP(Goods to Person)と呼ばれるロボットは、出荷する商品を載せた棚やコンテナを作業員のいるところまで運んでくれます。作業員は商品のある場所まで移動する必要がなくなるため、生産性の大幅な向上を期待できますが、設備の導入に多額の投資を必要とします。
それに対して、AMR(Autonomous Mobile Robot)に種別されるRapyuta Roboticsのロボットは、人との協働を特長としています。ロボットは、出荷する商品がある棚の前に移動して作業員が来るのを待ちます。作業員は、ロボットがいる場所に移動し、棚にある商品をコンテナに入れます。商品を受け取ったロボットは、作業員に行くべき場所を伝えた上で、自分も次の場所に移動するという具合です。人の作業をロボットに置き換えるのではなく、その一部を担うことで全体の生産性を高めるという仕組みであるが故に、もとからある棚やコンテナをそのまま使えます。
作業量に応じてロボットの運用台数を増減させることも簡単です。生産性の向上のみならず、イニシャルコストの抑制やレガシーとの両立にも適したビジネスモデルといえます。
加えて、日本は総じて現場の生産性が高く、人とロボットの高度な連携を期待できます。今後のさらなる人手不足を踏まえると、レガシーのある既存の物流センターでの自動化の推進は不可欠です。そう考えると、日本という国の特質に即したビジネスモデルでもあるわけです。
Rapyuta Roboticsは、群制御技術を活用して他社製のロボットをも管理できるようになることを理想としています。将来的には、PCにおけるWindowsのように、オペレーティングシステムとして価値を発揮する存在になっているかもしれません。
CropIn――ソリューションの提供により“農業技術者の必要性を減らす”
CropInは、「1エーカー当たりの価値の最大化」をビジョンとするアグリテックのスタートアップです。2010年にインドで設立後、アジア、アフリカ、欧州を中心に、50カ国を超える国々で事業活動を展開してます。
CropInの第1の柱である農場管理ソリューションは、土壌、気候、病害虫の発生状況などを解析するための衛星データ、過去の収穫実績などを基に、収穫量を最大化するための方法を提示します。肥料や農薬などの使い方が最適化されることで、開発途上国の農家であれば20%超の収穫増を見込めます。
リスク対応ソリューションは、農場管理ソリューションで得られたデータを基に、その農地での収益予測や想定リスクを提示します。農家は、この情報を基に農機などの設備投資を計画的に実行できます。収益予測の情報は現地の金融機関にも提供されており、融資の際の審査にも使われます。
品質管理ソリューションは、農作物の在庫や出荷の在り方を提示します。食品メーカーや流通事業者からすれば、農家がこのソリューションを活用することで、保管不良による品質劣化を防げるだけではなく、入荷の時期を想定できるようになります。
トレーサビリティーシステムは、農作物の包装資材にQRコードを貼ることで、生産地を追跡できるようにします。結果として農作物の安全性や信頼性が高まるため、売値の上昇を期待できるというわけです。
CropInは、現地の事業者を介してこれらのソリューションを提供しています。地域によって言語が異なるだけではなく、文字を読めない農家もいるからです。もっとも、農家に伝えるべき事項はCropInのアプリに表示されるので、農業に精通した事業者である必要はありません。専門的な農業技術者を必要とせずに農地の価値を最大化できることがCropInの本質的な機能であるといってよいでしょう。
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