日産が旧日立傘下の車載リチウムイオン電池メーカーを買収、官民ファンドから:電動化
日産自動車は、車載用リチウムイオン電池事業を行うビークルエナジージャパンを買収すると発表した。官民ファンドのINCJが保有する全普通株式を取得する最終契約書を締結しており、これによりビークルエナジージャパンは日産自動車の連結子会社となる予定だ。
日産自動車は2022年9月7日、車載用リチウムイオン電池事業を行うビークルエナジージャパンを買収すると発表した。官民ファンドのINCJが保有する全普通株式を取得するとともに、ビークルエナジージャパンが新たに発行する普通株式を引き受けるための最終契約書を締結しており、これによりビークルエナジージャパンは日産自動車の連結子会社となる予定だ。買収金額は非公開。
ビークルエナジージャパンの株式は、INCJの他、マクセルと日立Astemoが保有している。今回のINCJから日産自動車への株式譲渡後も、両社は株式保有を維持する。なお、INCJは「初回投資から3年が経過し、ビークルエナジージャパンは、車載リチウムイオン電池市場において一定の地位を確立した。INCJは、同社のさらなる事業成長のため、電動化戦略を掲げる日産自動車への株式譲渡が最も適切だと判断した」とコメントしている。
日産自動車は、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」における電動化戦略に向けて、主要な電池サプライヤーの1社であるビークルエナジージャパンを傘下に収めることで、安定的な車載リチウムイオン電池の調達先を確保し、性能とコストの双方で優位性を持つ次世代電池の開発も実現したい考え。また、日産自動車以外への車載リチウムイオン電池の供給も続ける方針である。
日立グループが2004年に設立した日立ビークルエナジーが出自
ビークルエナジージャパンは、日立グループでリチウムイオン電池を手掛けていた3社(日立、新神戸電機、日立マクセル)が合弁で2004年7月に設立した車載リチウムイオン電池の事業会社「日立ビークルエナジー」を出自とする。日立グループ内における電池事業の再編や、車載リチウムイオン電池の世界的な競争環境の厳しさもあり、2018年12月にはINCJとマクセルホールディングスとの共同出資体制に移行した。
この共同出資体制では、日立ビークルエナジーの出資比率はINCJ47%、マクセル47%、日立製作所子会社の日立オートモティブシステムズ(日立Astemoの前身)が6%、議決権比率ではINCJ76.2%、マクセル14.0%、日立オートモティブシステムズ9.8%となっていた。新体制への移行が完了した2019年3月には、現在のビークルエナジージャパンに社名を変更している。
なお、ビークルエナジージャパンは、直近の採用事例として、日産自動車のハイブリッド車「ノート e-POWER」やフォード(Ford Motor)のピックアップトラック「F-150」のハイブリッドモデルなどへの採用を明らかにしている。本社は茨城県ひたちなか市にあり、製造拠点は本社のある佐和事業所と京都事業所(京都府大山崎町)の2カ所。従業員数は2022年3月末時点で596人。代表取締役 CEO&COO 社長執行役員は、2021年10月に就任した池内弘氏が務める。池内氏は三洋電機出身で、同社の執行役員 モバイルエナジーカンパニーHEV事業部長から、パナソニック、ジャパンディスプレイ、マクセルホールディングスを経て、2019年3月にビークルエナジージャパンに入社した。
一方のビークルエナジージャパンを傘下に収める日産自動車は、経営環境が厳しい状況にあった2018年8月に、車載リチウムイオン電池子会社のオートモーティブエナジーサプライ(AESC)や、英国と米国の車載リチウムイオン電池工場を中国のエンビジョングループに売却している。一度は切り離した車載リチウムイオン電池事業を、また別の形で傘下に収めることとなった。
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