リュウグウより小さい直径わずか30mの小惑星へのタッチダウンは可能か?〜拡張ミッション【後編】〜:次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(21)(3/4 ページ)
2012年5月から始まった小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトを追う本連載も今回で最終回。大成功となった小惑星「リュウグウ」からのサンプルリターンに続く「拡張ミッション」解説の後編として、2026年7月予定の小惑星「2001 CC21」のフライバイ観測、2031年7月予定の小惑星「1998 KY26」のランデブー観測について解説する。
ターゲットマーカーが使えない?
そして2031年7月には、はやぶさ2の最終目的地である小惑星「1998 KY26」に到着する。この天体は直径30m程度と非常に小さく、約10分という周期で高速に自転していることが大きな特徴。過去、地球に接近したときにレーダーで観測した例があり、ジャガイモのような丸い形をしていることが分かっている。
ランデブー時、探査の拠点となる場所が「ホームポジション」である。天体に近過ぎると衝突する恐れがあるし、推進剤の消費量も増える。かといって、離れ過ぎると観測や接近に不便だ。探査でリスクのある挑戦ができるのも、安全な拠点があってこそ。安全性を最大限確保しつつ、距離を適切に設定する必要がある。
リュウグウでは、ホームポジションは距離20kmのところに設定されていた。1998 KY26の直径は30分の1ほどであり、重力の影響は極めて小さく、重力だけ考えれば距離は200mほどで構わない。しかし一方で、リュウグウのときとほとんど変わらないのが、太陽光圧による影響である。
リュウグウでの運用では、探査機は太陽光圧で流され、数100mオーダーで動いていたという。もしホームポジションを200mに設定すれば、この影響により、小惑星を一時的に見失ったり、最悪の場合は激突する恐れも出てくる。24時間体制で監視するのも難しいため、ホームポジションは数km程度離すことになりそうだ。
そして無事ホームポジションに到着したら、はやぶさ2は何をするのか。可能性の1つとして期待したいのはタッチダウンだ。もちろん、タッチダウンに成功したところで、もはやサンプルを地球に持ち帰ることはできない。しかし、ここで実証した新たな技術を、今後のプロジェクトに生かすことはできる。
はやぶさ2のタッチダウン方式では、目印として「ターゲットマーカー」を使用する。未使用のターゲットマーカーが1個残っており、1998 KY26でも使うことができるのだが、ここで問題となるのは、重力の小ささ。1998 KY26は高速に自転しているため、重力より遠心力の方が強く、天体表面に静止させられないのだ。
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