製造業の原価低減に必要不可欠な「機械設備のコスト」を分解する:生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(5)(1/4 ページ)
工場の自動化が進む中でより重要性を増している「設備管理」について解説する本連載。第4回は、製造業の原価低減に必要不可欠な「機械設備のコスト」について解説する。
製造現場には用途によって多種多様な機械設備がありますが、どのような機械設備にも共通的に降りかかってくる減価償却費やメンテナンス費用、電気やガス代などのエネルギー費や付帯費用などを含めた機械設備のコストについて理解しておくことが重要です。
さらに、機械設備の生産性評価の基本となる機械設備の能力や稼働率の定義を正しく理解すること、機械設備の稼働阻害要因に対する対応策などを含めた「機械設備のコスト」を中心に説明します。
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1.あらゆる職種の人が、原価計算を学ぶ意義とは
あらゆる職種に従事する人が、それぞれに割り当てられた仕事に卓越する努力を惜しまないことは当然のことです。しかし、原価計算についての知識に精通していることも、企業で仕事を遂行していく上で欠かせないとても重要なことです。
1.1 企業の目的は適正な利益を得ること
企業が適正な利益を得ることによって、株主に配当金を支払い、従業員に給与や賞与を払い、取引先に材料を発注したり作業を依頼したりすることで雇用が創出されます。国や自治体に税金を払い、また、適正な利益が得られれば、投資意欲が湧いて研究開発にもお金を使ってますます良い製品を作るようになり、究極的には従業員の生活の向上に寄与していくという流れが生まれます。適正な利益を得ることが企業活動にとって、いかに大切なことかが分かります。
この適正な利益を継続的に得ていくためには、企業で働く従業員が「良いもの(Quality)を早く(Delivery)、安く(Cost)作る」ことが必要です。この利益は、売価から原価を差し引いたものですが、昨今の低成長時代では、競争が激化し売価アップは甚だ難しく、むしろ売価は大幅に低下しているものが多く見受けられます。従って、適正な利益を得るためには、原価低減を行う他ありません。
原価低減を行うためには、設計改善や作業改善、購入品の価格低減などの方法がありますが、これらを実現するためには、原価計算の基本的な考え方、基礎的知識があった方が、より効果的な原価低減を推進することができます。
従って、設計部や資材部、品証部、製造部などに携わる従業員は、おのおのの本業が超一流になるように努力するのはもちろんですが、同時に「経理」に関する知識を身に付け、本業をさらに本物にしていくことが重要です。価格競争がますます激化していく時は、他社を上回る原価低減が不可決だからです。
1.2 原価計算の目的
原価計算の基本的な目的は「製品の原価を正確に把握し、利益指向の管理のために効果的な指針の役割を果たす」ことです。主な目的として、次の4項目にまとめることができます。
(1)財務諸表作成のために必要な数値を提供する
企業に対する出資者や債権者、経営者などのために、過去の一定期間における損益(P/L:損益計算書)、期末における財政状態(B/S:貸借対照表)、一定期間における現金の流入・流出状況(C/F:キャッシュフロー)を財務諸表に表示するために必要な真実の原価を集計します。
(2)製品の販売価格の決定に必要な資料を提供する
販売価格は需要と供給の関係や市場経済の動向などによって左右されますが、企業としての販売価格は適正利益を確保できるものでなくてはなりません。従って、原価計算は製品売価を決定する資料となり、企業競争における価格政策の立案のための方針となります。
(3)経営管理に必要な資料を提供する
経営管理者の原価管理業務に必要な資料を提供しなければなりません。原価予算を設定して実際の費用発生額を予算額と比較してその差異の原因を分析して、経営管理の関係者に報告し原価能率を高めることで、合理的な経営遂行のためのツールとして活用することに原価計算の意義があります。
(4)経営計画の立案に必要な原価情報を提供する
経営計画には個別経営計画と期間経営計画とがあります。個別経営計画は、経済の動態的変化に適応して、経営の諸問題が発生する都度、臨時的に設定されるものです。このような個別の問題に対して、経営計画を修正、確立するためには原価資料が必要となります。また、期間経営計画は、継続的に設定される予算統制を意味します。予算は一定の予算期間における企業の利益目標を指定し、各業務の諸活動全般にわたる総合的管理の指標となるものです。
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