製造業の原価低減に必要不可欠な「機械設備のコスト」を分解する:生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(5)(4/4 ページ)
工場の自動化が進む中でより重要性を増している「設備管理」について解説する本連載。第4回は、製造業の原価低減に必要不可欠な「機械設備のコスト」について解説する。
3.機械設備が消費する費用の低減
3.1 機械設備の能力が基本
機械設備は、材料を所定の形に変換することを繰り返し行うための道具であるといえます。そのため機械設備に課せられる機能と能力があらかじめ設計されています。よく用いられる機械設備の能力は、単位時間当たりの生産数量や、ワークを投入してから排出されるまでの1サイクルに必要とする時間=タクトタイムで表します。
機械設備の能力は、設計する段階で対象とする製品を1年間で何台生産するのか、1日当たりでは何台の生産になるかなどの生産すべき個数を決め、次にその設備を1日当たり何時間稼働させるかによって次式より算出します。
タクトタイムは、1個または1台を何秒で造らなければならないかという時間をいいます。タクトタイムは「1日当たりの稼働時間÷1日当たりの必要数量」、単位時間能力は「1時間÷タクトタイム」で算出します。
以上のように、生産能力を備えた機械設備が対象となりますが、設備費用の削減方法としては、以下に挙げる3つの項目があります。1.と2.は、主として設備設計部門や資材部門の業務にかかわる課題ですので、3.の製造現場としての立場に立って考えて見る必要があります。
- 設備設計の立場:与えられた設計仕様を満足する設備をいかに安く設計するか
- 設備購入の立場:与えられた設計仕様に満足する設備をいかに安く購入するか
- 設備使用の立場:加工対象とする製品を必要な量を生産するために、人、設備、付帯する費用などの投入資源をいかに安くできるか
3.2 設備稼働率向上による設備生産性の向上
機械設備が稼働する際の費用は、機械設備に投資した金額の回収と機械設備を運用する上で発生する付帯費用を加算し、該当する機械設備で生産する製品1個当たりに配賦して原価回収をします。従って、機械設備にかかる費用を最小にするということは、生産量を最大にすること、設備費用を最小にすることを意味しています。
機械設備の能力は、加工対象とする製品をどれだけ生産すべきかによって決定しなければなりません。ここでは機械設備の故障やトラブルによる停止を極力減らし、いかに良品のみの生産に費やせるかが重要となります。実際に機械設備を運用する場合に、ある単位時間内に生産できた量を「機械設備生産性(単位時間当たりの生産数量)」といい、操業時間内に設備が稼働した時間の比を「設備稼働率(正味稼働時間÷操業時間×100%)」といいます。
設備生産性や設備稼働率を向上させることは、製造現場に課せられた課題です。既に導入された機械設備も、以下に示す7つの機械設備の主な稼働阻害要因を改善することにより、設備生産性向上や設備稼働率の向上が可能となります。
- 準備作業(図面やプログラム内容の確認、機械設備動作の確認)
- 段取り作業(品種切り替えなどに伴う素材や治工具の交換、プログラムの交換)
- 設備故障(機械設備の故障に伴う調査や修理、動作再確認作業)
- 不良現象の確認と調査(不良の原因究明、機械設備の調整)
- 人待ち停止(作業者が操作をしないために稼働できないでいる状態)
- 製品待ち停止(前工程から製品が送られてこないための停止状態)
- 製品の詰まり停止(工程間に製品が詰まって、機械設備が止まっている状態)
◇ ◇ ◇ ◇
コスト意識は一般論でいえば、仕事に費やされるコストを的確に把握するとともに、「コストを最小限に抑えて継続的に利益を確保していく」という意識を持って仕事に取り組めることをいいます。その際の取り組み姿勢や着眼ポイントとして、次の図3に挙げる「原価低減のための7つの基本原則」を参考にしていただきたいと思います。
筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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