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業務効率化の道具箱(2)ショートカットキーも積もれば山となる山浦恒央の“くみこみ”な話(155)(1/3 ページ)

ソフトウェア開発にとどまらない、PCを使う全ての人が対象となるシリーズ「業務効率化の道具箱」。第2回は“塵も積もれば山になる”の効果を実感できるショートカットキーを紹介する。

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1.はじめに

 本シリーズでは、定時できっちりと帰宅するために、日々の作業を効率化する方法を紹介しています。シリーズ第1回の前回は、イントロダクション編として、下記の業務効率化の例を示しました。

  • スペックの高いハードウェアを導入する
  • 使用機器を使いこなす
  • ツールを導入する
  • 自分でツールを作る
  • 働き方を工夫する

 前回を踏まえて詳細な話に移ります。今回は、使用機器を使いこなすために知っておくと便利なショートカットキーを紹介します。ショートカットキーを知ることで、日々の作業が楽になり、エラーも減ります。

⇒連載「山浦恒央の“くみこみ”な話」バックナンバー

2.「最も働いた3週間」の経験から分かる「塵」時間の威力

激務
※写真はイメージです

 今から10年前、筆者の自分史の中で伝説となる「最も働いた3週間」がありました。南米のチリの主要産業を日本市場向けにプロモーションする英語の書籍を3週間で翻訳する仕事を請け負ったのです。200ページの大判の書籍で、図版や写真を差し引いて、実質、150ページで4万5000語。45頭のシロナガスクジラと戦う感じです。

 今は「DeepL」のように、そこそこ使えるレベルの高い自動翻訳ツールを無料で使えますが、当時の自動翻訳は小学生レベル。自力で翻訳するしかありません。2週間でドラフト訳を作り、残りの1週間で推敲(すいこう)して翻訳臭を消し、自然な日本語に仕上げる必要があります。延期できる予定は全て1カ月延ばし、1日20時間を翻訳に割り当てました。PCの隣にクッションを置き、眠くなればそこに頭を乗せて仮眠を取ります。食事は全て冷凍物で、調理時間の2分の間も翻訳します。トイレ、風呂にもPCを持ち込みました。どうしても所用で外出しなければならない場合、コピーした原文を折り畳んでポケットに入れ、地下鉄やバスの中で鉛筆で訳文を書きます。歩いていて交差点で青信号を待つ30秒間で、1〜2行は訳せます。こうして「地獄の3週間」で翻訳を完成させました。

 この時痛感したのは、30秒や1分、2分といった「塵(ちり)」時間が積もることで、数十ページ分の翻訳に充てられることでした。ざっくりした比率は、机上でPCを使って訳したのが100ページで、残りの100ページが「塵」時間での翻訳だと思います。以降、筆者の中では、あらかじめ存在する「山」よりも、後から積もって「山」になる「塵」の方が威力が高く、作業が進むと感じています。

3.なぜ作業が遅いのだろう

 同僚と単純作業を分担する時、作業速度に差が出ることがあります。例えば、「文書の転記を同じタイミングで始めたのに、自分は遅かった」という場合です。

 「作業のイメージができている」「タッチタイピングができる」の差は小さくはありませんが、もっと大きな違いが生じる要因があります。その一つが、「ショートカットキー」でしょう。「転記」作業でショートカットキーを覚えると、1つの動作にかかる時間が短くなります。

 読者のみなさんは情報処理能力のレベルが高いので、「そんなの知ってるよ」という反応でしょう。情報処理の対象を「小売店で働くパート従業員」「スマホ世代の若者」の一般レベルまで広げると、ショートカットキーを活用できている人はそれほど多くありません※1)

※1)知り合いの話ですが、最近の大学生には、卒業論文もスマートフォンで書く人がいるようで、キーボード入力に慣れていない学生が少なくないそうです。そのため、企業研修では、キーボード操作から教えると聞きました。情報系の真っただ中にいる筆者には信じられない話ですが、学生からすると、スマートフォンに「メール」「電話」「カメラ」「ブラウザ閲覧」「音楽・映像鑑賞」の機能があるため、そもそも覚える必要も意思もないのでしょう。

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