コロナ禍に続き原材料価格の高騰が新たな課題に、データが映す製造業の現状:ものづくり白書2022を読み解く(1)(3/6 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2022年版ものづくり白書」が2021年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2022年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第1回ではCOVID-19の影響を受けた製造業のサプライチェーン強靭化に向けた取り組みの現状を確認し、原材料価格の高騰という新たな課題が浮上している状況をデータで読み解く。
COVID-19に加え、原材料価格の高騰も大きく影響
2021年もCOVID-19の影響は色濃くあったが、製造業の事業に影響を与え得る社会情勢の変化については、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大」を抜いて「原材料価格の高騰」がトップという結果になっている(図17)。
2020年度に行われた同様の調査では約8割が「新型コロナウイルス感染症の感染拡大」と回答したが、2021年度の調査結果では「原材料価格の高騰」「新型コロナウイルス感染症の感染拡大」「人手不足」「半導体不足」の4項目の回答が約半数に達した。中でも「原材料価格の高騰」と「部素材不足」の割合は2020年から大きく増加している。2021年度には、COVID-19の感染拡大に加え、原材料価格の高騰や部素材不足などの影響が大きくなっていることが分かる。
原材料価格について2022年版ものづくり白書では、もともと上昇傾向にあった原油価格が、ウクライナ情勢の緊迫によりさらに高騰したことで、素材系の業種を中心に生産コストの増加につながったと指摘している。加えて、世界的な半導体需要の高まりなどを受けた半導体不足も大きな影響を与えている。鉱工業生産活動の全体的な水準を示す鉱工業生産指数をみると、2020年5月に底を打った後は回復基調にあったが、2021年後半には世界的な半導体不足などの影響を受けて悪化している。(図18)。
このような社会情勢の変化によって支障をきたした業務内容については「国内からの部材の調達」「営業・受注」「国内の生産活動」など多岐にわたる(図19)。2020年度に行われた同様の調査結果と比較すると、「営業・受注」が約8割から約5割に減少している一方で「国内からの部材の調達」「海外からの部材の調達」「物流・配送」は増加している。これらのことから、2021年度ではサプライチェーンの上流から下流まで、より広範囲に影響が及んでいることがうかがえる。特に「海外からの部材の調達」については、COVID-19の感染拡大などによる経済活動の停滞と、海上輸送コンテナが世界的に不足したことが、国内製造業にも影響した。
COVID-19の感染拡大や部素材不足などの事業環境変化の中で、事業者が直近2、3年で実施した企業行動としては「値上げ(原材料高騰による価格転嫁等)」「賃上げ」の割合が高い(図20)。企業規模別に比較しても「値上げ(原材料高騰による価格転嫁等)」は企業規模にかかわらず割合が高くなっている(図21)。それ以外では、中小企業では「賃上げ」が最も多く、大企業では「積極的な投資」や「コスト削減」が多い。
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