埋蔵量は多いリチウム資源、需要に見合った現実的な供給は可能?:今こそ知りたい電池のあれこれ(14)(1/3 ページ)
環境影響を考える際のポイントの1つとして、今回は資源消費、特にリチウムイオン電池には欠かせない「リチウム」にまつわる問題に注目していきたいと思います。
これまで、電池に関する環境影響を考える上で重要な「リサイクル」「リユース」「LCA」といった内容を取り上げてきました。
環境影響というと、昨今はどうしても「脱炭素」に対する議論が注目されがちですが、CO2排出以外の要因による環境影響についても忘れることなく考えていくことが大切です。環境影響を考える際のポイントの1つとして、今回は資源消費、特にリチウムイオン電池には欠かせない「リチウム」にまつわる問題に注目していきたいと思います。
リチウム資源は本当に不足するのか?
「脱炭素」や「SDGs」といった取り組みが注目されることで、電気自動車(EV)を筆頭にリチウムイオン電池搭載製品の開発や普及の流れが加速しています。それに伴い、リチウムイオン電池の需要も増加しています。一説には、年間のリチウム需要が2030年には2020年の6〜7倍に増加するとも予想されています。そのため、リチウムイオン電池の原料であるリチウム資源が不足するのではないかという懸念の声がしばしば聞こえてきます。
「リチウム資源は本当に不足するのか?」という問いに対する答えですが、単純な埋蔵量で考えると「いいえ」です。リチウムは地殻中で25番目に多く存在する元素です。用いる前提条件や試算方法によって算出される推定埋蔵量に差はありますが、おおむねどの計算結果からも今後の需要を賄えるだけの量のリチウムは地球上に存在するとされています。
ですので、今後リチウムが不足する心配はありません。と、ここで早々に今回のコラムを終えることができるとよかったのですが、話はそう簡単にはいきません。確かに埋蔵量そのものは多いのですが「今後の需要に見合った量のリチウムが現実的に供給可能なのか?」という意味では懸念が残ります。
天然のリチウム資源は3種類、それぞれの特徴は
現在、世界中で採掘することができる天然のリチウム資源は一般的に、鉱石、かん水、堆積岩の3種類に分けられます。鉱石は現在のリチウム生産において主流とされている原料資源です。リチウム鉱物はマグマが冷えて結晶化するときに形成される火成岩の一種である「ペグマタイト」に含まれることが多く、オーストラリアをはじめ、米国やカナダなど、世界のさまざまな地域で採掘されています。
塩湖などから採取されるかん水(塩分を含んだ水)もリチウムが抽出できる資源として利用されています。かん水として埋蔵するリチウムは、チリ北東部、アルゼンチン北西部、ボリビア南部のいわゆる「リチウム三角地帯」に集中しており、中でもチリのリチウム埋蔵量は全世界割合のおよそ半分を占めるといわれています。
リチウム世界埋蔵量を資源種ごとの存在割合で見ると、かん水が約66%と多く、鉱石は約26%となっています。しかし、実際に生産されているリチウムの割合で見ると、鉱石から生産される割合が約55%、かん水からは約45%と逆転する傾向にあります。
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