LIXILがノーコード開発で目指す「デジタルの民主化」、9カ月で680のアプリが稼働:イノベーションのレシピ(3/3 ページ)
グーグル・クラウド・ジャパンがノーコード開発環境「AppSheet」の事業展開について説明。会見にはLIXIL 常務役員 デジタル部門 システム開発運用統括部 リーダーの岩崎磨氏が登壇し、2021年10月に社内導入を始めてから1年弱での成果を紹介した。
製造部門の画像認識AIアプリ開発でもノーコードが活躍
LIXILにおけるAppSheetの全社展開は、8人から成る「No-Code CoE(Center of Excellence)」と250人のノーコードチャンピオンの体制で推進してきた。デジタル部門のメンバーが務めるNo-Code CoEに対して、ノーコードチャンピオンは各部門を代表するノーコード先行人材の位置付けになる。
ここで重要なのが、AppSheetの横展開をチャンピオン任せにしない体制づくりである。チャンピオン任せにすると小さなチームでの活動にとどまる傾向があり、そこでNo-Code CoEやチャンピオンと連携して部門内の個々のチームの枠を超えるような活動を行う「Digitization Core Team」を設置した。これにより、部門レベルの輪で全体最適を図る、現場側の推進体制を構築できるという。
会見では、「見積管理・分析アプリ」「アルコールチェックアプリ」「エンタープライズシステムへのノーコード適用」「画像認識AIを搭載したアルミ形材棚卸アプリ」の事例を紹介した。
中でも、画像認識AIを搭載したアルミ形材棚卸アプリは、現場の若手社員の斬新なアイデアを基に開発された。AI開発などAppSheetでは難しい機能はデジタル部門も加わっており、現場とデジタル部門の役割分担によって有用なアプリ開発を実現できた事例になる。
これまでの開発アプリ数は約1万7000を超えているが、本番運用にまで至っているのは680にすぎない。これは、アジャイル開発における、トライ&エラーを素早く回している結果としてこのような数字になっているとともに、“野良アプリ”を生まないための統制をデジタル部門側で一定程度とっている結果でもある。
LIXILでのAppSheet導入はこれから2年目を迎え、利活用促進のフェーズに入る。将来的には「PCを開いて業務をする人は全てAppSheetでアプリケーション開発ができるようにすることが目的」(岩崎氏)だが、当面はただ利用人数を増やすのではなく、「デジタルの民主化」に向けたカルチャー変革の加速に必要な人員への浸透を優先していく考えだ。
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