LIXILが欧州メーカーと樹脂窓を共同開発、リサイクルのエコシステム構築も本腰:材料技術
LIXILは、ドイツの樹脂押出材メーカーであるプロファイン(Profine)と共同開発した樹脂窓の新製品「EW」を発表。世界トップクラスの断熱性能を達成するとともに、端材の使用率を従来比で3倍に高めるなどリサイクル性を高めたことを特徴とする。
LIXILは2021年7月5日、オンラインで会見を開き、ドイツの樹脂押出材メーカーであるプロファイン(Profine)と共同開発した樹脂窓の新製品「EW」を発表した。世界トップクラスの断熱性能となる熱貫流率0.79W/m2・Kを達成するとともに、端材の使用率を従来比で3倍に高めるなどリサイクル性を高めたことを特徴とする。今後は窓製品について、家庭の消費エネルギーの4分の1を占める冷暖房の効率向上につなげられる高断熱性能窓の比率を高め、現在の74%から2025年度(2026年3月期)までに100%にする方針。樹脂窓のリサイクルについても、官民の協議によるエコシステム構築に貢献したい考えだ。
さまざまな産業で温室効果ガスの削減が求められているが、住宅などの家庭部門は2030年に2013年比で39%減と、業務・オフィス部門の40%減に次ぐ目標値となっている。そのためには新築住宅のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の建築だけでなく、約6200万戸のストックがあるといわれる既存住宅のエネルギー消費量をZEHに近づけなければならない。
そこで住設メーカーであるLIXILは「住宅の高断熱化」と「創エネ設備の普及」でZEH化を進めていく方針だが、これらのうち住宅の高断熱化と大きく関係する開口部で大きな比率を占める窓だ。同社は2021年度(2022年3月期)中に、アルミ、樹脂、アルミと樹脂を使うハイブリッド、全ての窓製品をより高断熱化したラインアップに刷新する計画であり、EWは樹脂窓の新製品となる。
「EW」の3つの特徴
EWの特徴は「優れた窓性能」「美しいデザイン」「資源の循環利用」の3つ。1つ目の優れた窓性能では、多層ホロー構造や高性能のクリプトンガスを用いたトリプルガラス(3層ガラス)の採用により、縦すべり出し窓で熱貫流率0.79W/m2・Kを達成した。
また、プロファインとの共同開発品第1弾となる「引き違い窓 S仕様」については、プロファインの樹脂形材押出技術により、強度を確保しながらフレームをスリム化してガラス面積を拡大しながらも、断熱性能は従来品の1.46W/m2・Kから1.35W/m2・Kに向上している。加えて、「日本の窓」を知り尽くしたLIXILのノウハウを反映することで、機密、水密、耐風圧でトップクラスの性能を確保した。中でも機密性能は、JISで最も厳しいA-4等級を大きく上回っているという。
2つ目の美しいデザインでは、内観色として天然木の素材感を追求した木調色と純粋な白にこだわった「ピュアホワイト」を用意した。1500mm角の大開口横すべり出し窓は、採光性や眺望性が大幅に向上している。プロファインと共同開発の引き違い窓 S仕様も、ガラス面積の拡大で意匠性、採光性、眺望性が向上しており、シンプルなフレームに合わせてシャープなデザインの専用クレセントを用いている。
3つ目の資源の循環利用では、樹脂窓のリサイクルで先進的な取り組みを進める欧州を中心に事業を展開するプロファインの技術を活用することにより、引き違い窓 S仕様のフレーム内部に工場の製造工程発生する端材をより多く用いて、樹脂フレームのリサイクル材使用率を従来比で3倍に高めた。リサイクル材使用率の向上で鍵になったのが、これまで活用が難しかった色が付いているカラー端材を、外側から見えない箇所に積極的に活用したことだ。
また、押縁仕様により樹脂とガラスの分離回収を容易に行える設計とした。木調色のEW for Designに用いている表面ラッピングについても、一般的な樹脂窓に用いられているオレフィンシートに替えて、樹脂形材と同じ素材である樹脂ラッピング材を用いることでリサイクルを容易にしている。
LIXILは2022年度(2023年3月期)までに端材再利用率100%を目指しており、その後は欧州でエコシステムとして確立されている市中回収を基にした樹脂窓リサイクルシステムの仕組みの確立に取り組む方針である。2019年8月から検討中であり、窓製品の大手企業として大きく貢献したい考えだ。
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