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AI活用が進む自動車業界、その継続的な運用に必要な「MLOps」とは自動車業界向けAI活用入門(前編)(3/3 ページ)

AIの活用が進む自動車業界だが、その使いこなしという意味では課題も多い。本稿は前後編に分けて、自動車業界が抱えるAI活用の課題を取り上げるとともに、その解決策として「機械学習モデル管理の重要性」(前編)と「コネクテッドデータの活用」(後編)という2つの観点で解説する。

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MLOpsによるモデルの改善と検証

 機械学習モデルの精度の下落、入力データの変化などがあれば、アラートを出すことに加えて、機械学習モデルを調整し自動生成が行えることが望ましいです。これには機械学習モデルの設計と構築を自動化する技術である「AutoML」を活用します(図3)。

図3
図3 DataRobotが提供するMLOpsとAutoMLの機能[クリックで拡大]

 機械学習モデルの再構築からデプロイまでを自動化できれば、問題が発生した時に即座に入れ替えることができるので、ダウンタイムの発生を最小限にできます。

 DataRobotのMLOpsの場合、機械学習モデルを入れ替える時に、完全に入れ替えるのではなく、複数モデルを併用することができます。実際に運用に使うのは1つのモデルのデータになりますが、複数モデルの比較をできるようにしておくことに意義があります。新しいモデルに問題が生じた時に他のモデルを使った場合のシミュレーションがすぐにできますし、運用に使うモデルの切り替えもすぐにできます。

 なお、日本の自動車業界では国内工場で確立された製造プロセスを、海外の工場でそのまま踏襲することがあります。その時に機械学習モデルも併せて導入するのであれば、海外工場の生産ラインの設計や設定の微妙な違いを踏まえて調整する必要があります。他の工場であっても同様に機械学習モデルを運用できるのかは、注意深い監視が必要で、その時にもMLOpsが有効になるでしょう。

まとめ:MLOps導入のメリットを理解して正しく使おう

 既に自動車業界ではさまざまなAIが稼働していますが、定常的に運用する中での管理が欠かせません。重要な業務でAIを活用している場合ほど、機械学習モデルに不具合が発生した場合のビジネス上のインパクトが大きくなります。不良品の検知ができなければ、歩留まりが悪化してしまいますし、工場設備の不良を見過ごせばライン停止などに陥ってしまいます。

 しかし、AIを活用する現場が個々にモデルを管理しようとすると、モデルごとに監視や改善を行う必要があり煩雑になります。MLOpsを使えば複数のモデルを一元管理できるので工数削減になりますし、管理者が1人でも十分対応可能です。

 MLOpsの導入は運用中のAIの管理、AI精度の劣化の監視、改善モデルの検証が可能になり、AIの平常的な運用のためには欠かせないものとなっています。



 次回の後編では、モビリティ領域で収集したさまざまな大量のデータ、例えば、車両製造の現場から収集した工場IoTデータなどや走行中の車両から収集したコネクテットデータをいかに新たな車両の開発や改善に効率的に活用するかについて解説します。

筆者プロフィール

山本 光穂(やまもと みつお) DataRobot データサイエンティスト

約15年間、自動車業界において最先端のIT技術を活用した製品プロトタイプ開発やデータ分析業務などに携わった知見を活用して、製造業、特に自動車関連企業の課題解決支援に従事。またコミュニティー活動に積極的に取り組んでおり、データ分析コミュニティーであるPyData.Tokyoのメインオーガナイザを務める。

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