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DXとは何か? その本来の意味と4つの進化形態DXによる製造業の進化(1)(3/3 ページ)

国内企業に強く求められているDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、製造業がどのような進化を遂げられるのかを解説する本連載。第1回は、そもそもDXとは何なのかを説明する。

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DX4.0:インダストリアルトランスフォーメーション

 「インダストリアルトランスフォーメーション(Industrial Transformation)」は、DXの最終段階です。コーポレートトランスフォーメーションを実現した企業が社会生活や経済活動に革新をもたらします。業界全体のメカニズムが再構成されることで、より豊かで快適な社会/経済になることが期待されます。

 例えば、自動車業界はCASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)の進展により変革期を迎えるといわれています。自動車メーカーが「クルマの開発/製造」から「移動サービスの提供」にアイデンティティーを変えることもその一要素といえますが、それだけではありません。シェアリングが進展し、「クルマは都度利用するモノ」になれば暮らしの快適性は高まりますが、クルマを売るためのカーディーラーは不要になります。電動化が進めば、移動時のCO2排出量だけではなく、クルマの部品点数も減少し、自動車メーカーを頂点とした生産体制は崩れ去ります。ガソリンスタンドもいらなくなるでしょう。

 上記はあくまで例です。自動車以外のさまざまな業界/業種においても、新たな価値を創造する非連続なインダストリアルトランスフォーメーションが進むはずです。

インダストリアルトランスフォーメーションの例
インダストリアルトランスフォーメーションの例[クリックで拡大]

 つまり、DXは、企業単体の革新のみならず、ゆくゆくは業界全体のメカニズムを変えてしまうほどのインパクトをもたらすということです。DXを推進するに当たっては、他社も同様の取り組みを展開する可能性があること、結果としてインダストリアルトランスフォーメーションに至ることが想定されること、その未来を十分に見据えた上で、自社のみならず、業界全体としての目指す姿と、そこに至るまでのDX戦略を描くことが重要です。自社の競争戦略を思考するだけではなく、他社との協調を通じてどのような社会/経済を実現しようとするのか、そのグランドビジョンを示すことでインダストリアルトランスフォーメーションをリードすることができれば、いわゆるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)を超えるプラットフォーマーになることも夢ではないでしょう。

ビジネスモデルの進化に向けたDX戦略の重要性

 DXには、これら4つの段階があることに留意して戦略を描くことが大切です。目先のデジタイゼーションやデジタライゼーションだけをターゲットにビジネスの革新を進めると、将来使わないデジタル技術に投資を実行してしまう可能性があるからです。

 コーポレートトランスフォーメーションやインダストリアルトランスフォーメーションを成し遂げた後の目指す姿を具体化した上で、その実現に向けたDX戦略を策定する。そうすれば、より計画的かつ合理的に進化できるはずです。



 では、DXの先にある目指す姿として、どのようなビジネスモデルが考えられるでしょうか。次回は、DXが進んだ未来における「DX時代ならではのビジネスモデル」を解説します。

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筆者プロフィール

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小野塚 征志(おのづか まさし) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。長期ビジョンや経営計画の作成、新規事業の開発、成長戦略やアライアンス戦略の策定、構造改革の推進などを通じてビジネスモデルの革新を支援。近著に、『DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)、『サプライウェブ−次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『ロジスティクス4.0−物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)など。

株式会社ローランド・ベルガー https://rolandberger.tokyo/

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