生産性の高い機械設備を維持していくための「保全組織」とその業務とは:生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(4)(4/4 ページ)
工場の自動化が進む中でより重要性を増している「設備管理」について解説する本連載。第4回は、設備保全のための「保全組織」とその業務内容について解説する。
3.保全効果の評価方法
一般的に、製造技術を評価するように保全活動の成果を科学的数値で表すことは困難です。しかし、その活動の成果を測定し、これを基準にして経営上の方針を作ることは意義のあることだと考えます。一般にその成果の表し方は、利用目的によって次のように大別することができます。
- 経営者や管理者が大局的に将来の見通しを立てるための資料となる
- 経営者や管理者が努力の結果を知るための資料となることから、次の努力目標を立案するための資料として役だつものとなる
保全の効果は、特に生産部門とは異なり、とかく表面に表れにくく、把握が難しいものです。何を基準にして保全活動の成果を判定したらよいかに苦慮します。また、保全効果は客観的な理論というものがないので、何らかの過去の経験値を利用して統計的に将来を推定しなければならないことになります。以下は現在、よく活用されている保全効果の測定手法です。他にも多数ありますが、代表的な算出方法を挙げておきました。
- 突発故障度数率=突発故障件数÷設備稼働時間
- 突発故障強度率=突発故障停止時間÷設備稼働時間
- 休止時間の推移=月別設備停止時間の推移
- 機械設備の運転1時間当たり修繕費=総修繕費÷機械設備の運転時間
- 製品製造原価百万円当たりの修繕費=総修繕費÷総製造原価(百万円)
工作機械設備などは、精度や効率、操作性の観点から、何らかの等級を定めて、各等級別の機械設備の台数などを定期的に把握していく方法も考えられます。このような管理手法は総合的なもので、改善の計画やその実施状況の分析結果と対比して、考察を加えていきながら、さらに優良な機械設備を目指して改善していきます。
◇ ◇ ◇ ◇
初期の設備管理では、故障の発生の都度、いかに速やかに修理するかということに重点が置かれましたが、その後、いかに故障を起こさないように最もよい状態で機械設備を稼働させるかということが重視されるようになってきました。
製品の販売予測に基づいて生産計画を立案し、機械設備の稼働計画が立てられます。これによりオペレーターの要員計画を立案します。このようにして設備を計画配置して、機械設備が常に最高の能率を発揮するように保ってこそ、作業標準が厳守され、作業は標準時間通りに遂行されて、生産は遅延なく計画通りに進み、工場の生産は生産計画と実際の生産と一致させることができます。もし、設備管理が不完全な場合には、生産は計画通りに進行できないことになります。そのような状態にならないために、配置した設備の能力を最高に発揮できるように、シッカリした設備保全に努力を払うことが原価低減となります。
筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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