生産性の高い機械設備を維持していくための「保全組織」とその業務とは:生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(4)(3/4 ページ)
工場の自動化が進む中でより重要性を増している「設備管理」について解説する本連載。第4回は、設備保全のための「保全組織」とその業務内容について解説する。
2.2 修理
保全部門は、現場で生産に用いる機械設備を最も良い状態に保ち続ける責任があり、保守の状態が悪い機械設備については警告できるような権限を持っていることが望ましいといえます。また、保全部門の主たる業務として、突発事故による機械設備の故障修理、日常的な給油、整備、分解組立、現場修理、部品の取り換え、修理、予防保全のための更生修理などの作業などを行います。
更生修理は、機械設備を使い続けた結果、摩耗、経年変化などによる性能劣化を回復させる修理のことをいい、突発的に発生した故障修理とは意味が異なります。オーバーホールなど、原則として全体を分解する修理を指し、分解した後、点検、部品の修理/取り換え、組み付け、調整、精度チェックを行うことで、元の性能をよみがえらせることを指します。
修理は予防保全の本来の業務であり、原則として検査の結果に基づいて検査員が工事票を発行し、機械設備の稼働部門と打ち合わせて修理時期および修理の程度などを決め、それによって修理工事が行います。そのため、検査員は現場修理員と連絡を密にして修理内容や日程、人員配置などを打ち合わせます。
(1)工事管理
工事管理の要点は、工事日程通りに仕事をしてなお余っている力、つまり“余力”の管理です。緊急の度合いによって工事を進めていくことと、工事作業員に仕事の待ちが発生しないようにすることが大切です。そのためには、必要とする工事の手順と工数を見積もって日程を決め、進度を管理することが必要です。これによって、検査に必要な修理が適切に行われるようになります。
(2)修理管理
修理作業の能率は、生産作業の作業能率に比べて極めて低いというのが一般的です。修理作業の計画に必要な作業時間の見積もりは、工事の修理日程計画の立案などの基礎となりますので、できるだけ正確に決めておくことが大切です。
作業時間の見積もりは、科学的根拠に基づいて客観的に算出、設定すれば、作業計画は確実に遂行することができます。同時に、保全作業員のモラールは向上し、予防保全の推進に効果的なことは明らかです。しかしながら、全ての作業について高い精度の作業時間を設定することは、多くの労力と時間を費やすことになりますので、自社に適した方法を採用し、重点的に適用していくことが肝要です。よく用いられる作業時間の見積もり方式には、次の方法があります。
(a)経験による方法
現場の監督者などの経験や勘に頼る方法です。とかく主観的であることから作業者の不満が発生する場合もあります。ある程度は、不正確になることはまぬがれません。
(b)実績資料による方法
前項の「経験による方法」より精度も高く確実であるという理由から、一般的に用いられていますが、科学的根拠により決定したものではないという欠点があります。
(c)標準時間資料による方法
作業時間のデータを分類・整理して、時間と変動要因との関係を数式、図表などにまとめたものを用いて標準時間を設定する方法です。「標準時間資料法」には、ストップウォッチやVTRを用いて、作業時間や作業方法を観察する方法と、人が行う作業を基本動作レベルまで分解し、その基本動作に前もって定められた時間を割り当てて算出し、そこから作業時間を見積もるPTS(Predetermined-Time Standards)法があります。通常は、ストップウォッチ法が広範囲に使用されています。最も確実な客観的根拠による代表的な方法がPTS法です。
修理作業を行う上で注意しなければならないことは、作業のムダが予想外に多く発生するということです。これは保全部門と生産現場の間における情報連携の状況にもよりますが、修理作業員が手待ちの状態になってしまい、その結果として生産計画にも影響を及ぼすことにもなります。この対策としては、保全作業の作業測定を行って、作業の手待ち時間の減少と作業速度を正当なものに改善していかなければなりません。
また、修理作業員が作業現場へ出向くための往復歩行時間に予想以上に時間を費やしていたり、部品や資材、治工具類などの整備が悪く、モノを探すために時間を浪費したりする例が多くみられます。どのような科学的手法を駆使しても、前提条件として設備管理の体勢がずさんであったり、表面的な5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ・習慣)で終わってしまっていたりしては意味がありません。
2.3 技術と管理
ここまで主に「検査」「修理」について説明しましたが、その範囲に「技術」と「管理」が含まれる部分もあり、明確に分離して説明をするには難があります。それをあえて分けるとすると以下のような項目となります。保全業務として考えると、「技術」と「管理」を含めて「検査」「修理」をシッカリと行っていくという考えた方がよいと思います。
- 設計:機械設備の修理や改造の設計製図
- 見積:保全作業に関する見積もり
- 作業計画:予防保全計画の立案
- 保全資料の作成と関係する情報の収集:
機械設備の点検票、保全台帳、その他各種保全資料の作成と情報収集 - 機械設備の更生修理や後進計画
- 機械設備の新規投資計画の検討:
機械設備の新規投資計画に参画し、対象設備の投資計画や受入・据え付け工事の計画立案
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